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item通信



長野県木島平村立木島平小学校

学びの共同体とは

■学びの共同体では、通常、「共有の学び」(教科書レベル)と「ジャンプの学び」(教科書以上のレベル)の二つの課題で協同的学びを組織しています。

■「ジャンプの課題」はできる子にとって有意義であるだけでなく、できない子にとっても有意義とされます。なぜなら、できない子は「ジャンプの課題」においていっそう夢中になって学び、たとえジャンプの課題は達成できなくても、基礎的概念を習得している。

「学びの共同体の改革 課題と展望」佐藤学教授資料より


長野県木島平村立木島平小学校「協同的な学び」から

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長野県木島平村立木島平小学校 - 「協同的な学び」で子どもたちの思考力を育む

 今回は、長野県の木島平村立木島平小学校(学校長 山屋秀夫先生)での活用事例を、学校での取り組み「協同的な学び」のご紹介とともにお届けします。対話を主軸に進める「協同的な学び」は、アクティブラーニングの具体的なあり方を提示するものでもあります。

 本取材は、2016年2月1日付 日本教育新聞取材に本機構スタッフが同席し、インタビューの内容を中心にまとめたものです。

*協同的な学び「ジャンプの課題」「アイテム」を活用 2016年2月1日 日本教育新聞掲載記事PDF

「協同的な学び」で子どもたちの思考力を育む。子どもたちのわからなさに寄り添う

山屋秀夫校長先生(左)と野村修治教頭先生木島平小学校の研究内容である「協同的な学び」についてお聞かせください。

野村修治教頭− 木島平小学校は1村1校の学校で、中学校とともに小・中一貫教育に7年前から取り組んでいます。その一貫教育をつないでいく基盤となっているものが「協同的な学び」と呼ばれる授業のスタイルです。こちらを小・中学校、共通して授業に採り入れることを実践し、積み重ねていくことで小・中一貫教育の充実を図っています。本村では「ふるさと木島平」を心に刻めるような小・中一貫教育の実現を目指しています。
 私たちは、「協同的な学び」を「対話的コミュニケーションを基盤として、課題について少人数で互恵的に学ぶこと」と捉えています。聴く、問うことを、子どもたち同士、教師と子どもたちという関係の中で築きながら授業や学習を進めることを大切にしています。
 「協同的な学び」の中で授業実践を進めるに当たり、本村では、学習院大学教授、並びに東京大学名誉教授の佐藤学先生と東京大学大学院教授の小国喜弘先生にご指導いただいていますが、私たちが目指す「協同的な学び」は、「学びの共同体」と同一のものです。「学びの共同体」の中には、三つの対話を大切にする三位一体説があります。三つの対話というのは、自分が学習対象と向き合う中で自問し、思考や判断を深める対話、友達と関わる中で生まれる対話、そして、友達と学習対象との関わりから生まれる対話です。「協同的な学び」でも、この三つの対話をとても大切にしています。具体的には、授業をつくる際、対話と聞き合いの関係を大事にし、教師は子どもたちの分からなさに丁寧に寄り添い追究していく授業を進めています。教師がある子どもたちの分からなさを、本時の授業の中で大切なことだと位置付け判断した場合、その分からなさをクラス全体で追究することになります。「協同的な学び」の中では、友達同士が心に耳を傾けられるような人間関係、聴き合いの関係を築いていることにもなります。
 また、分からなさの追究は、子どもたちのこだわりの追究にもつながっています。追究していくことによって、本校は全国学力・学習状況調査のB問題で非常に高い数値を出しています。A問題も平均より高い数値が出ていますが、本年度の特徴として、とりわけB問題で高い数値を示せたのは、そういったところに起因しているかもしれません。
 また、授業づくりの中では、課題の設定も大きなポイントになります。「学びの共同体」の授業構造として、1時間の授業の中に「共有の課題」と「ジャンプ課題」、二つの課題を位置付けて取り組みます。子どもの分からない所を採り上げて課題と位置付ける場合もありますし、学習内容の思考力等を高めていくために、アイテムの中にある問題をジャンプの課題として採り入れる場合もあります。
 「協同的な学び」で育まれていることは、子どもたちがやり遂げたときの満足感、達成感。クラスの一員として認められている自尊感情や自己肯定感です。また、滑らかな小中接続が実現していると思います。「協同的な学び」では、学力向上の面、学習内容の面と併せて、心の教育、人格形成的な面も併せ持っていると思います。現在の研究目標は、協同的な学びを基盤とし、授業の質を高めていくことです。

ありがとうございます。「協同的な学び」ですが、先ほど、佐藤学先生の考えを参考にと言われました。佐藤先生の場合、「共同的な学び」の『きょう』の字が『共に』という字だと思いますが、学校として、協力の『協』の字を使っている理由は何かありますか。

野村教頭− 「学びの共同体」では、確かに『共に』という字ですが、本校では、協力の『協』です。先ほども少し言いましたが、「学びの共同体」の授業スタイルとしては、課題を二つ据えることと、4人等の少人数のグループで学び合うことがあると思います。人間関係や人格形成に関わることかもしれませんが、学び合う中で、共に支え合うこと、その部分を特に大事にしたいという願いからこの『協』の字が使われていると思います。

B問題でかなりの成果が出ているとお聞きしましたが、こちらは、算数と、国語も含めていますか。

野村教頭− そうです。今年度は理科も行われましたが、理科も含め全て昨年度を上回りました。書くことを大事にしていることと、もう一つは、自分の分からないことへの追究を中途半端にしないことです。課題として設定したものに対し、自分たちが納得するまで追究していく。そうした積み重ねが大きい気がします。

山屋秀夫校長− 私もこの学校へ来て驚きました。高学年での授業ですが、もう終わる頃になって、そろそろまとまるかというときに、『僕はこれがまだ分かりません!』と堂々と言う子がいます。すると、子どもたちもそこにどんどん寄り添っていくという状況があるんです。いよいよまとめというときに、『いや、分かりません。僕はどうしてもここが納得できません』というところが、すごいと思います。

今井輝彦教諭− そこが本校の特徴だと思います。思考が止まらない、ずっと連続して追究していくところがあります。その積み重ねが成果として表れていると思います。私のクラスも、授業の終末辺りで、ここでまとめを書きたいというときに、分からないという意見が出てくることがあります。積み重ねの中で、子どもたちの関係の中でもそれが許されるというか、そこに寄り添っていける互恵的な人間関係ができているところが大きいと感じています。

山屋校長− 今井先生も言いましたが、佐藤先生も、学びの中では誰も1人にしないと言われます。そこが一番の根っこになっていると思います。こうやって、皆で開けた関係ができていることが基盤になっていると思います。

3年という短い中でそこまで環境が整うというのはすごいことかと思います。現状での課題はありますか。

山屋校長− 本校は、旧北部、中部、南部の三つの小学校が統合して、新制の木島平小学校ができて今年で6年目です。開校の年から、協同的な学びを通して質の高い学びをやっていこうという目標を掲げ、6年間積み重ねてきた経緯があります。本校は普通の公立の学校です。今年は職員の2分の1近くが替わりました。私も今年度異動してまいりました。この学校に赴任して、初めてこのやり方に出会う職員がいます。ですから、皆が同じレベルというのはなかなか難しいです。職員が今までやってきた考えもありますし、他校への異動もあります。それが課題ではありますね。

アイテム導入の経緯

ありがとうございます。
では、アイテムに関してお伺いしたいのですが、まず、導入された経緯をお話しいただければと思います。

山屋校長− 私の前任で、現在、木島平中学校の学校長が、3年前に佐藤学先生の「学びの共同体」の研修会に参加した折に、こういう教材があると紹介を受けたそうです。そのときは、活用している学校がまだ少なかったのですが、基本、発展、活用がしっかり構成されているということで、ぜひこれを採り上げて、木島平の子どもたちに下ろしていきたいと思ったというのが発端と聞いております。
 「共同的な学び」の中でジャンプの課題が設定されていますが、アイテムにも、内容的にとても高度なものが入っています。ジャンプの課題を設定するにも十分対応できる内容と判断し、翌年4月(2014年度)から、全学年、一斉に導入したと聞いています。根底には、アイテムを導入することで、アクティブラーニングの推進において、アクティブラーナーの目を持って子どもたちに向き合ってほしいという想いがあったのだと聞いています。

授業づくりとアイテム

先ほど教頭先生から、子どもの分からない部分を特に大切にしているとお聞きました。その視点から、1時間の授業づくりの在り方を、アイテムとの関わりを含めて教えてください。

今井教諭− 子どもたちの分からないには、段階があります。問題把握ができない子どももいれば、基礎力はある程度付いていても、自分が持っているものから応用力を引き出す方法が分からない子もます。また、分かっていても、それを友達にどう伝えたらいいのか分からない子どももいます。そういった分からなさをお互いに共有しています。
 このアイテムは3部構成になっていますよね。最初の2ページには基礎問題が出されていて、その後に『活用する力をつけよう』というややレベルの上がった問題があり、最後に『チャレンジしよう』というかなりハイレベルな問題が出されます。『活用する力をつけよう』と、『チャレンジしよう』のページを活用することで、どの子も分からないような問題からスタートします。教科書問題だと、学習が割とできる子どもが分からないところからスタートできないので、どの子も、教える側と教えられる側という関係性ができないところでスタートに立てるという意味でも、このアイテムの中のチャレンジ領域の問題は、ジャンプの課題に適した問題がたくさんあり、多くの職員が活用しています。
 佐藤学先生からは「常々話し合う価値がある問いを設定しなければいけない」と言われています。チャレンジ領域にある問題の中には、子どもたちがとことん追究していくような内容になっているものが多くあり、その中から教師が選んで使う場面が多いかと思います。そうした中では、教師の側でもアイテムの問題をよく理解しておくことが大事かと思っています。

アイテムを導入された際、どのタイミングでジャンプの課題として、アイテムのチャレンジ領域の問題を提示されたのでしょうか。 また、アイテムを活用する中で、子どもたちの変容はどれくらい経ってから表れましたか。また、どのように実感されましたか。

今井教諭− 5月中には。子どもたちの中には今までに積んできたものもありました。もちろん、学級内には算数がものすごく苦手な子どももいて、ここまではできたということをだいぶノートに書くようになったところも見定めたタイミングだったと思います。アイテムのチャレンジ問題をやり始めてから白紙で出す子が激減したというか、テストでも白紙で出す子がいなくなったなと、2学期ぐらいから感じました。答えは出ていないのに、「ここまではできた」と、私の所に来てうれしそうに話す子が増えたと思います。

アイテムのチャレンジ領域の問題ですが、先生の中で、例えば1学期に1題とか、1週間に1題とか、提示する際の目安はありますか。

今井教諭− あまり決めてはいませんが、単元をやっていく中で、子どもたちの定着の度合いというか、あまり定着がよくない所でハイレベルな所に行き過ぎても、逆に混乱させてしまうので、そのさじ加減は状況によって変わります。マンネリというか、停滞するようなときには、ぽんといきなり1問出したりして活性化させることもあります。

今、先生が言われたことは、今年、こちらに異動してきた先生がたにも、情報として伝えられていますか。

野村教頭− 特にそういう場面はありません。そういったところの情報交換は、1・2年、3・4年、5・6年の2学年ずつの研究グループがあるので、その中で授業研究会をしている中で、ジャンプの課題の扱いと、アイテムをどのように扱うかについて話題が出たときに共有されています。ですので、今井先生も、高学年の5・6年生の中でそういう場があれば、そういうところは伝えていると思います。

授業において「ジャンプの課題」の位置づけが難しいという声を他校で聞きますが…

野村教頭− ジャンプの課題については、佐藤先生の指導では、クラスの半数が解けない状況があってもいいという指摘をもらっています。授業づくりの中でのジャンプの課題の位置付けは、学級づくりと少し関係しています。学び合いの授業、協同的な学びの中で、支え合う人間関係ができることが前提となります。ですからどのクラスでも関係性の構築は大事にしています。
 それができていれば、ジャンプの課題がたとえレベルが高くて難しいと感じたとしても、子ども一人一人が分からない部分をお互いにつぶやいたり、出し合ったりして、分からないことを共有し合えます。そして、教師は、今、子どもたちがつまずいている所はどういうところかということを受け止め、そのとき、その場に応じた支援、支える言葉掛けや補助的な教材を組み入れながらジャンプの課題を共に解決していくスタイルを大事にしているのではないかと思います。
 ですので、アイテムの、活用する力の部分やチャレンジの部分を、家庭学習のように子ども1人の学習課題にすると厳しい状況があります。これが、「協同的な学び」の授業の中だと、共に支え合って追究することが可能になってくると思うので、子どもたちがぽかんとしたり、引いてしまったりすることが比較的少なく取り組めていると思います。

そこに至るまでにどれぐらいかかりますか。クラスや学年のカラーによるところはあると思いますが、2年、3年たたないと、厳しいのではないでしょうか。

野村教頭− 今井先生は昨年まで3年生の担任をしていました。本校は小・中一貫教育の関係で、4年生が修了するときに学級の再編成をします。ですから5年生で新しい学級になりますが、その新しい学級を今年度から担任してもらっています。ですので、1学期、1から新しい人間関係を築きながらの授業づくりに取り組まれている訳です。私が授業参観等で見ると、人間関係は、非常に早い段階から、違和感のないというか、いい雰囲気がつくり上げられていると思います。
 それは、子どもたちの声や表情のちょっとした反応に耳を傾け、丁寧に寄り添いながら、受け止めていく先生の姿勢によりますね。子どもも教師も、長い年月をかけて積み上げながら、変容したり成長する部分はありますが、今井先生の授業の進め方を見ていると、教師の姿勢によっては、1年目で変わることは可能だと思います。

まず、先生がたの意識をしっかり構築することが一番大きいですか。

野村教頭− 教師主導で、教師の価値観だけで進めるような授業であると厳しいです。いかに子どもの声に耳を傾けるかが大切です。子どもの分からない部分については、その子の個性、性格を捉えながら、その子に応じて、時には教師が努めて寄り添う必要があります。それによって、分からない部分をその子が伝えられたことを認めてあげたいです。そのようなことを積み重ねていかれないと授業が回っていかない、という状況があるのではないでしょうか。

山屋校長− 教師が聞き役になって、子どもたちのつなぎ役になる必要はありますね。先生方の今までの概念や経験や考え方を見直し、自分を変える。その教師の姿勢が一番になってくるなと思っています。そのためには、私たち教師の研修がとても大事です。先生方、全員に富山での視察に行ってもらったり、先進的な取り組み、学び合いをやっている所を見に行って、そこで学んできたことを取り入れようと頑張っているところです。

「協同的な学び」を通して、アクティブラーニングのあり方について、非常に示唆に富んだご意見をいただたように思います。本日は、貴重なお話をいただきありがとうございました。