「アイテム」トップ > 活用校の声 > 日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2009 > 日本教育新聞 2009/11/16付 連動企画vol.2

日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2009

写真

 2009年11月16日号、日本教育新聞企画特集の中で、取材協力を頂いた茨城県那珂郡東海村立舟石川小学校は、平成17,18,19年度文部科学省より学力向上拠点形成事業研究実践校として委嘱を受け、研究実践を進められてきた小学校です。「考える力」の育成に重点を置いた3年間の具体的な取組みについて学校長、大友光男先生と大内清隆先生にお話をいただきました。大内先生には、当時のご苦労も含めてインタビューの中でお話いただいております。

写真

学力向上拠点形成事業の3年間

日本教育新聞記者・山中

 まずは、学校での算数指導のあり方、趣旨等についてお聞かせ下さい。

大内先生

 算数の指導に力を入れたのは、文部科学省の学力向上拠点形成事業として平成17年度から3年間の指定を受けたものですから、それをきっかけに取り組みました。アイテム算数を導入したのはその3年目です。それまでは、学習内容の系統表(左:資料①参照)に重点を置いて研究を進めていたのですが、それを具現化するために授業作りを3年目に取り組みました。結局子どもたちの勉強では、前の学年の学習内容で躓きがあると、それが後々になって大きくなってしまうということがあります。私はそれを授業の中で『学習の虫歯』と子どもたちに話しているのですが、その部分がどんどん抜け落ちていってしまって、勉強が分からない、算数が分からないというようになってしまうことが多いです。それを防ぐために、まず系統表で、各先生方が前の学年と次の学年の学習内容を確認、チェックできるような流れを研修でつくりました。合わせて、それぞれの先生が皆さん工夫をして授業をされるのですが、基本となる流れが違うものです。学年が変わって担任の先生が変わると、その進め方に慣れるまでにまた躓きが生じてしまうということで、学校の中の基本になる学習の進め方というものを一緒に検討していました。算数については「苦手だ」と捕らえている子どもが、アンケート調査などを見ても出てきていますので、そういう実態も踏まえて考えていきました。

日本教育新聞記者・山中

 研究の主題とその意図とは?

大内先生

 本校では「考える力」「思考力」という部分に重点を置いたものですから、教科書に載っている問題をそのまま進めるということではなくて、子どもたちの考える力を伸ばすためにどのような問題を出すか、「問題提示」の時にも工夫を加えるようにしました。授業を作るためには問題を工夫する、子どもたちが取り組みやすい、または取り組んでみようと思うような問題を作る、そのような考え方で進めました。

日本教育新聞記者・山中

 指定を受けていた3年間での具体的な取組みとしてはどのような事をされたのでしょうか。

大内先生

 3年間の中でも、最初の1年間は生活科と社会科の指定を同時に受けていました。初年度は秋の発表会の後から算数に切り替えたんです。最初に行ったのが、学習内容の系統表で、校内での共通認識(把握)を行いました。その次に、子どもたちの学習がスムーズに行えるように、振り返りカード(左:資料②参照)を作りました。さらに授業の話し合いが深まらないとうことで、構造化を行いましたが、このあたりで少し行き詰まりが出ました。結局のところ、どの様に深めればいいか、なんです。地域の特性もあって本校の子どもたちというのは、内輪では盛り上がれるのですが外側には働きかけにくい。そういう部分をもっていますので、話し合いのための表現力が鍛えられていないんですね。これは今でも継続的な課題となっています。授業の中で改めて自分の考えを発表することについては、あまり得意ではなかったということです。ただ、算数の授業を通して耕していくうちに、子どもたちから十分に声が出るようになったので、そのような意味では成果があったかなと思っています。

アイテムとの出会い

日本教育新聞記者・山中

 実際の指導の中で、特に力を入れられた点というのはどのあたりでしょうか。

大内先生

 特に力を入れたのは、「舟石川小学校(独自)の形になる算数の進め方」です。この点については、(本校)全ての先生方に共通の理解を貰わないといけないことですから、その形を作る、ということがひとつです。もうひとつは、大きな冒険だったのですがアイテム算数を導入したという点です。子どもたちの基礎の部分を形成するならば、本来ならば従来のくり返し計算ドリルの方がよかったわけです。アイテム算数にも計算ドリルはありますが、使用している教科書の単元構成が異なることもあり、ドリルだけであれば、使い勝手が良くない部分もありました。敢えてアイテム算数を導入した理由としては、学校ではどうしても低位の子どもたちに目が行きがちなのですが、このあたりの地域では学習塾などに通う子どもも増えてきています。そういった環境の変化から、学力の高い子どもの要求にも学校が応えられるようにする、という狙いもありました。その部分では難解な問題、ちょっと頭を捻るような問題に取り組める問題集ということで導入に至ったわけです。 3年目の時の授業公開までには、授業の中にアイテム算数を導入するという取り組みを平行して行いました。

 子どもたちの練習(演習)の段階などに「アイテムのこの問題をやってみよう」という取り上げ方をしたり、低学年の子どもたちには進度、問題集の進め方を覚えてもらうために「(みんなで)一緒にやりましょう」という形で取り扱ったりしました。

日本教育新聞記者・山中

 進みや理解に個人差が生じる場合があると思うのですが、そのあたりの対応は?

大内先生

 アイテムを導入したときに大変だったのは、先生も保護者の方も同じですが、与えられたもの(問題集)は全てやらなくてはいけない、という思いがあることです。けれど難しい問題に手を出しても分からない子どもというのが出てくるわけですね。その子に対しては、そのための指導の時間を取らなければなりません。朝の自習の時間ですとか。私が6年生を担当した時には、朝の時間に解説を加えたりしていました。算数の授業以外のところで出来るだけフォローをしていました。低学年では書き込むと紙が破れてしまったりというハプニング(*)もありました(笑)その点にも注意をしながら進めたりもしました。

*新版アイテムでは、紙質を破れにくいものに変更しています。

日本教育新聞記者・山中

 1年目はやり残しがないように気を使われたんですね・・・。

大内先生

 1年目はそうでしたね。研究発表があるものですから、その授業の時には丸付けの赤が入っていなくてはいけないという思いが強かったようですね。本校はマジメな先生が多いですから(笑)
アイテムを導入した効果はあったと思っています。先生方がかなりのエネルギーをそこに費やしていましたからね・・・次年度はちょっと肩の力を抜きましょう、ということで、学校全体での導入はお休みしました。しかし全く使わないということではなくて、児童の希望購入を募る形で継続をしました。アイテムは書店での購入が出来ない問題集ですから、学校でまとめて取りますよ、ということですね。そうしましたら、各学年とも半数以上の希望者がありました。予想以上に購入したいという希望がありましたね。進め方としては家庭学習の中で使用するという形を取りました。進めていく中で、全国学力・学習状況緒さが始まったことなどもありまして、保護者の方からアイテムのような問題集を(学校で)扱ってほしいという声も聞かれるようになりました。加えて子どもたちの中で、食いつくとおもしろがって解く子が出てきたんですね。ですから、学力保証という考え方も必要なので、今年度は高学年での全体採用に至りました。(うがった考え方も少しありますが)6年生の4月に全国学力・学習状況調査は行われますよね。そうしますと5年生の段階での耕しが必要になるわけです。そのような考えもあり、私の方で5年生からの導入の提案をしました。高学年で、中学の数学に繋がる取り組みとしても導入しましょうということになりました。2年生から4年生までについては、昨年度の経験もあるので希望購入ということで。新1年生については、一度保護者の方に「こういう問題集です」という説明をする必要があるだろうということで、少し遅れての希望購入となりました。

日本教育新聞記者・山中

 アイテムの学校内での位置づけというのは?

大内先生

 1年生から4年生までは家庭学習ですね。高学年についても、現段階では授業の中までは入ってきていないです。むしろ計算ドリル+問題集ということで(演習材として)使っています。また子どもたちには「自主学習ノート」を持たせていますので、その中で進めていくというやり方ですね。
学年全体で導入していたときには、「考える力をつけよう」「発展させよう」の問題を取り上げて授業をするということもありました。子ども全員が同じ問題集を持っているのでそのようなことも可能ですよね。
低学年、中学年については、基礎的な問題のページ(「練習しよう」「確かな力をつけよう」)をまとめの問題として使ったという先生もいらっしゃいました。活用方法はそれぞれの先生が工夫していましたね。

日本教育新聞記者・山中

 アイテムを導入することで先生方が感じた手ごたえ、実感などありますか?

大内先生

 教科書の問題が以前に比べますと簡単になってきていますよね。ただ教科書の中にも『算数広場』などのような発展的な問題を取り扱うコーナーがありますが、そのようなページへの子どもたちの食いつきが良くなった(関心が高まった)という変化はありますね。つまりもっと複雑な問題、もっと高度な問題をやってみよう、挑戦しようという意欲が、全員ではないですが高まってきています。考え方は色々ですが、上位の子どもたちがそのように動いていきますと、小集団の話し合いでも教えあい、学び合いが生まれたり、低位の子どもも「もう少しやってみよう」という意欲付けに繋がっていると思います。

日本教育新聞記者・山中

 研究の趣旨、目的と照らし合わせたときにその効果というのはいかがだったのでしょうか。

大内先生

 子どもたちの「考える力」や「話し合いの力」、そのような力を伸ばすためのベースになるものはアイテムを利用してついてきたと思っています。子どもたち自身も、「つぎにこういうものに繋がるんだな」という見通しが立つというのは、勉強の意欲につながりますね。私は6年生を担当していたので、「中学の数学ではね・・・」という話をしますと、子どもたちはそのことをノートに書き留めるようになっていきましたね。
そのようにひとつの学習刺激にはなっていました。

日本教育新聞記者・山中

 アイテム導入のきっかけは?

大内先生

 現在東海村の指導主事になられていますが、前任の菊池(先生)が、筑波大学附属小学校の授業研究会に参加をしまして、「アイテム」を学校へ持ってきたのが始まりです。菊池先生から、私がアイテムを預かりまして、その後私も実際に(筑波大附属小での)研究会に行ってみて、アイテムを手にして「ああ、こういう問題集を導入した方が本校の研究趣旨にあうのかな」と感じました。
以前は、教科書会社からアイテムのような問題集が出ていました。その問題集も取り寄せて比べてみたのですが、現在は教科書の改訂に伴って内容(レベル)が教科書と同じになってしまったんですね。ですので、アイテムは教科書改訂前の内容を維持した問題集だったので、その点で導入に至りました。
学校全体での導入は1年でしたが、昨年の希望購入が学年の半数以上に上ったというのは、保護者の方もアイテムに対して手ごたえを感じているという結果だと思います。アイテムを使ってみて、子どもたちがよく出来ていた(解けていた)と捉えています。その結果を受けて、今年度は高学年のみですが学年採択になりました。

学校の考え方として

日本教育新聞記者・山中

 校長先生は今までにも幾つかの学校をご経験されているかと思いますが、他校と比べてみていかがでしょうか。

大友学校長

 東海村の予算は、他の市町村に比べ裕福です。村長自体もかなり教育に力をいれて下さる方なので、優遇されているなと感じる部分はあります。子どもたちが生き生きと活動できる環境が整っていますね。「教育、環境、原子力、農業」の4本柱を村長は掲げています。議会でも環境問題はよく討議されていますね。また教育問題についても、議員の方々も含めて関心が高いので、議会の議題にあがることも多々ありました。

大内先生

 学校長は、東海村の教育委員会の指導室長を昨年度まで務められていたので、東海の行政については精通して周知しているという背景がありますね。

大友学校長

 村ではありますが、他の市町村と比べても家庭環境的には都会的な要素は持っていると思います。教育に対して関心が高く、しっかりとした見解をお持ちのご家庭が多いです。そのあたりも恵まれていると感じますね。しっかりされている分、学校に対して意見をいただくこともありますが(笑)ご指摘は真摯に受け止めて対応しています。家庭環境というのはどうしても地域差がありますので、(アイテムのようなものを)校長が取り入れたいと思っても、なかなか思い通りにいかないことも現実的にはありますね。東海村は地域の方の理解が深かったことと、地元の方が学校に対してとても協力的で、本当に恵まれているんですね。

先生にとってのアイテム

日本教育新聞記者・山中

 先生方の間でアイテムのこの使い方はいいな、と思われる点はございますか?

大内先生

 計算ドリルの使い方については、HPから教科書別単元対応表をダウンロードして子どもたちに配布することでかなり解決は出来ました。アイテムは基礎の問題から発展的な問題へとステップを踏んで構成されているので、子どもたちは、段階的にその都度問題に挑戦していくことが出来る。それがよかったんだと思います。私は時々授業の中で「このページの中で分からなかったり解けなかった問題ある?」と聞くと、何人かの子どもが手を上げられるようになったんですね。以前だったら、恥ずかしくて手を上げられなかったんです。分からないところを聞くわけですから。学級集団としても、算数の勉強に対して意欲的になったと思います。子どもの中で、解けない問題はクリアをして次の問題に進みたいな、という思いがあって質問をするんです。ですので、解けない子が多い問題については「グループで教え合いをしてごらん」と言います。どうしても解けない場合は私が黒板を使って説明をする、と、そのような方法で進めていました。そういう進め方が、アイテムだと出来るんですね。計算問題のドリルについては、個人の作業になるのでこういう進め方は全く出来なかった。教科書の問題とは別に、みんなで話し合える問題がある、その点においてアイテムを授業で扱う場合一番効果が上がると思っています。

 子どもたちに与えるときに、その子によってどの問題までいけるかというが違います。無理をさせてしまうと子どもの中で消化不良を起こしてしまいますので、計算ドリルの問題も、3段になっているところを、計算が苦手な子どもには「1段目だけやりなさい」と指示を出すこともあります。その代わりに、毎日計算練習をやろうね、という使い方をしています。計算ドリルひとつにしても、全部消化するという考えはしていません。計算ドリル以外の問題については、とにかく分かるところまで自分ですすめる、としています。
お家の人も子どもも、「全部の問題を解かないといけない」という考えをまず払拭してもらわないといけない、ということが公立小学校においてはとても厳しいなと感じました。それだけは留意して声がけをして進めています。

 先生方も初年度に自分たちで色々試行錯誤しながら使い方を見つけた部分があります。2年目、3年
目と、アイテムに慣れた子どもたちは自主学習的な使い方が出来てきていると思います。ただ、保護者の方からは、やっぱりこの問題集は難しいと言う声も当然聞こえては来ています。ですから、そのあたりについては、継続して使っていく中でご理解をいただき消化していきたいと思っています。

次世代教育推進機構 齊藤

: 先生方の反応はいかがですか?

大内先生

 計算ドリルの場合は、子どもたちに与えて、全て子どもたちが自分ですすめることが可能なものですよね。ですから提出する(ドリル用の)ノートも、パラパラと見てやっているかのチェックをすればいいのですが、アイテムの場合は、引っかかっている問題があったら先生が教えなくてはいけないんですね。そういった意味では負担がありますから抵抗感のある先生もいらっしゃるかと思いますね。ただ初年度にくらべたらそれ程でもなくなってきていますね。現在使用している高学年の先生からはそういった声は出ていないですね。

 丁度今、東海村の学力向上委員会の方でも「家庭学習の効率的な進め方」という議題があがっています。例えば、授業の中でも宿題でも、「○ページ」という指示ではなく「○ページのこの問題をやりましょう」という指示の仕方に変えていく工夫をしています。ドリルですとどうしても問題が計算だけになってしまうので、授業でやった問題とそこから少し発展させた問題をお家で解いてきましょう、という宿題の出し方を高学年ではしていきたいなと思っています。これは実際にやってみると、なかなか効果があがってきてい ます。

次世代教育推進機構 齊藤

 新学習指導要領でも、家庭学習について触れてきていますよね。

大内先生

 正直なところ、学校の授業だけではカバーしきれなくってきている部分はありますね。子どもたちは家でも結構色々と忙しいんですけどね。今は通信教育をやったり塾に行ったりと・・・。

日本教育新聞記者・山中

 学校としては、家庭学習の指示というのはどの様にされているのですか?

大内先生

 本校の先生方は、読書とノート学習の2本立てで出しています。それをプリント(表)でチェックしていくかたちが多いです。保護者の方に判を押してもらって。東海村の方からは、もう一工夫して欲しいという課題が出ているので、家庭学習の内容を精選したり何か他の方法がないかということで、みんなで知恵 を出し合いましょうという話し合いをしている段階です。今年からは学校として体育の指定校(左:写真参照)になっているので、体育にも力を入れています。体力と学力の相関関係についてはこれから研究していきたいと思います(左:資料③参照)。

大友学校長

 体力というのは何においてもベースですからね。学力を伸ばしていくという意味においても大切なことだと思っています。

大内先生

 サッカー出来る子がボールを投げられない時代ですからね(笑)サッカーは選抜に選ばれるような子が、ボール投げで20mも投げられないという子が実際にいるんですよ。こういうアンバランスな体力に最近の子はなってきているんですね。そういうこともあって、今年度から学校の体育の時間に体力つくりを取り入れてきています。

大友学校長

 学習意欲というのにも、友達関係が大きく関わってきます。友達と外あそびをするにしても、ボールも投げられないようでは仲間に入れない。友達の輪から取り残されてしまっては、おもしろいと感じることもなくなってしまいますから。そういった意味でも他の教科との関係性は大きいと思いますので、体育の指定を受けたことにはその結果についても期待を持っています。

*取材にご協力をいただきました茨城県那珂郡東海村立舟石川小学校様には、心より感謝御礼を申し上げます

*本記事は、学校様のご了解をいただいた上で掲載いたしております。外部転載等につきましては固くお断り申し上げます。

資料

6年の「比」の授業をする大内先生。

資料

子どもたちからでた、いろいろな解き方を整理してまとめていきます。

資料

1年生の算数授業から。(授業するのは髙畑先生)

資料

資料①:算数科指導内容系統表
「『学習の虫歯』の予防と手当のために系統表を」と大内先生は話す。
(クリックで拡大)

資料

資料②:考え方の振り返りカード
「考え方が書けたか」と「良い解き方がわかったか」の各質問に三段階の自己評価をしていきます。
(クリックで拡大)

資料

子どもたちの動きは元気そのもの。21年度から体育の指定校に。

資料 資料

平均台もなんのその。巧みにバランスをとります。
「体育と他教科との関係性は大きい」と大友校長は話す。

資料

資料③:舟石川小学校 平成21年度 研究主題
(クリックで拡大)

パンフレット「アイテム算数のご案内」

パンフレット「アイテム算数のご案内」
価格
ご注文用紙・審査用見本をご希望の方 お申込みはこちらから