「アイテム」トップ > 活用校の声 > 日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2011 > 日本教育新聞 2011/01/17付 連動企画vol.2

日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2011

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 小中一貫教育の中で、今年度より品川区立 荏原平塚学園様で、アイテム算数をご導入いただいています。
 1月17日号日本教育新聞・企画特集(最終面)にてご紹介さしあげておりますが、小中一貫校としての取り組みに加えて、アイテム導入に至る経緯、学校を取り巻く環境も含め取材時インタビューの概要をお届けします。

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品川区 小中一貫校 荏原平塚学園
学校長  庭野 正和 先生
少人数担当・算数主任: 岡田 佐和子 先生

小中一貫校としての試み
1) 小学校と中学校で共有する

西山氏

 本日はよろしくお願い致します。貴校は22年度より、施設一体型の小中一貫校としてスタートされていますね。
 小中9年間の中で、一貫して通して取り組まれている事はございますか?

庭野学校長

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 小中一貫校の目標として、「自律を重視した生活指導」「自立を目指したキャリア教育」を掲げて取り組んでいます。子どもたちの生活面の安定性と、キャリア教育ということですね。キャリア教育については、全ての領域、全ての教科で行っていこうとしています。「国語」、「算数」「数学」というのは世の中に出て活用をしていく場面が大変多いので、特にこの教科についてはしっかりと取り組まなくてはいけない、と思っています。子ども自身が身につけたい、出来るようになりたいと思っているでしょうし、保護者も身につけさせたいと思っていると思います。加えて、本校独自のものとしてカリキュラムをしっかりと作っていくことがあります。これは小中一貫校の、一番キーになる点だと思います。小中通して9年間の学習が、この学校の中だけで完結できる、見通しが立つ、ということですね。品川区の学力定着度調査も全国学力調査もそうですが、テストの結果が学校に戻ってきたとき、小学校、中学校両方の結果を検討・分析することができます。そしてその分析をもとに、お互いにどの部分の指導が足りないかな、ということを伝え合うことができます。具体的に、「中学生になって図形が弱いよ」「分数の計算が理解できていないよ」と伝えてもらえれば、その部分を小学校でも重点的に指導できるという利点があります。

岡田先生

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 本校では、学期に一度「習熟度別委員会」というものを行っています。これは「算数」に関する委員会ですが、その時は、7,8,9年生の数学の先生方にも参加してもらっています。今、小学校ではこのように指導をしています、ということを聞いてもらいながら、中学校の先生から見た課題をお話いただています。学力調査の結果も私たちで全て分析します。中学校の結果も見て、出来ていない単元については(小学校でも)意識をして指導をしています。中学校の先生方に一番指摘されるのは、「割合」と「比例」の理解が出来ていないという点です。基本的な計算問題でも、四則混合の計算がなかなかできない、ということも言われます。できないというよりも、ミスが増えるということですね。加えて「計算のきまり」が使えないという結果がでていましたので、その点は特に注意して学習しています。「計算のきまり」は4年生の学習単元ですが、実際に教科書でも扱いが軽く、授業時数も少ないです。ほんの数時間で終わってしまうのですが、その中で定着させることはとても厳しいので、練習問題を多くやらせたり、放課後学習で補充したりしています。また、「面積」や「体積」を学習するときに、「計算のきまり」を使える場面が多く出てきます。子どもの中には気づいて意識的に「計算のきまり」を使って計算する子もいるのですが、気づかない子もいるので、こちらから意識的に「ここで『計算のきまり』が使えるね」と声掛けをして、出てきたときには必ず指導をするようにしています。

西山氏

 これは小学校の先生全員が共有していることですか?

岡田先生

 そうです。私は少人数指導担当ですので、担任の先生とも連絡を取りながら進めています。授業は少人数に分けて行うことが多いですが、基本的には等質です。ひとクラスであれば2つに分けて、2クラスであれば3つに分けます。少人数指導であっても基本的なことはどちらも同じことを学習しますが、単元の終り近くの時間は習熟度別で分けることはあります。少人数で分けたときも共通の指導が出来るように、「板書計画」というものを作成しています。このように板書をしながら、一時間の(算数)授業を流していきましょう、という指標です。「計算のきまり」であったらどの様に計算をし、黒板に書いていくかなども全く同じように指導をしていきます。本校の「算数指導のポイント」 は別紙にまとめてありますので、詳しくはそちら見ていただければと思いますが。

西山氏

 逆に、小学校から中学校への申し送りのような事はされているのでしょうか。

岡田先生

 申し送りもしています。単元ごとに「ここは出来ています」「ここは出来ていません」ということですね。現在は移行措置期間で移行単元がとても多いので、「申し訳ありませんが、この単元は充分に指導できていません」といった内容もありますね。
学校長: 中学校の方からは、「この単元はやり直さないといけないかな」という声があがってきますから、反映されていると思います。中学の教科書内容から入っても、生徒から「???」という反応が返ってくる時があると、指導する側も「理解できていないんじゃないかな」と疑いを持ちますよね。そういう時は、少しさかのぼって学習します。そんな時、本校は(小中と)みんな職員室が一緒ですから、先生同士で連絡が取りやすいです。これは小中一貫校としての強みでもありますが、施設一体型校舎のとてもいい点だな、と感じます。

2) 表現する力、読み取る力をつける

西山氏

 小中一貫校として力を入れられている点、または研究テーマというものはございますか?

岡田先生

 今年、先生方の中で共通理解したこととして、「表現する力をつけよう」という点があります。具体的には「図や式、言葉を使って説明する活動」を取り入れていきましょう、ということです。小学校では既に取り入れていたのですが、中学校の方でも意識して取り組んで貰っていると思います。友達が書いた図や式、言葉(文章)から、考えを読み取る力というのはまだまだ定着していません。例えば教科書に「○○くんの考え」というように書いてあっても、内容を読み取ることが出来ません。要するに何を言おうとしているのか、どう考えているのか、意味が理解できていない、ということです。大人からみると「ここに書いてあるじゃない」と思うのですが、子どもには意外と難しいようで、分かっていないことが多いですね。

齊藤

 問題を読み取るというのは、「算数」に関わらず「国語」にも関係しますし、この単元のように「資料を読み取る力」は「社会」にも繋がりますよね。

庭野学校長

 「算数」から他教科へ広げていく、という意味合いもあります。また他教科から「算数」へ繋がることもあると思います。「表やグラフの読み方」などは、まさにそうですね。これが出来ないと「社会」「理科」の学習がすすめられないですよね。今まで「算数」と「理科」というのは、学習指導要領を作られる先生方の間で意識が一致していなかったこともあり、ズレがあったように感じます。でも新学習指導要領では「理数教育」の充実に重点がおかれたので、「算数」「数学」と「理科」の教科間でかなりすり合わせがされ、揃いましたね。5年生の「算数」でこの単元をやるから「理科」はここを学習する、というように。本校においてはまだ(教科間で)横のつながりを活かすところまで及んでおりませんが、進めやすくなるのではないかなと思います。

岡田先生

 先日担任の先生と相談した中で、3年の理科で「はかり」を使うので「算数」でも「重さ」の学習を先にやりましょう、という話になったことがありました。

3) 「書くこと」を習慣化する

西山氏

 「表現する力をつける」というテーマは、低学年から取り組まれていることなんですね。

庭野学校長

 はい。人への「説明のしかた」は、自分だけが分かっているだけでは成立しません。だからそのスタイルや手法は、学習して身につけていかなくてはいけない。要するに、「相手に分かってもらえる説明のしかた」です。具体的には、「始めに何を言うのか」「結論はどうなのか」「どのような順序で話を進めていくか」といったことですね。そういうものしっかりと指導していくことが大切なのだと思います。「出来るだけ丁寧に分かりやすく」を心がけて、子どもたちには(岡田を中心に)指導をすすめています。しかし、なかなか目に見えたかたちで結果を出すのは難しいですね。
 実は、子どもたちの解答の分析も指導者にとって難しいですよ。私は過去に「理科」に深く携わっていたことがあるのですが、答えを自由記述にすると、子どもたちからはあらゆる解答が出てきますからね。どこまでの答えを「正解」とするのか、判断が難しいです。でもそれ以前に、今は自由記述にした場合(何も)書けない、白紙の回答という子どもが多いですね。ですから、子どもたちに、「書くこと」をとにかくしなさい、と伝えています。解答用紙を白紙で出すことはやめよう、と。「なんでもいいから」とは言えませんが、自分の頭に浮かぶことを、今まで学習したことを使ったらどのように言えるのか考えて書きなさい、と言っています。この点については、しっかりと、これまでもこれからもきちんと指導していきたいと思います。
 何も書かなければ、それは「ゼロ」です。問いかけられても、それについて何も応えなければ、「ゼロ」となってしまします。問いかけに対しては、何か反応しなければいけないと思います。「反応する」ということが、今の子どもたちはあまり得意ではないですね。

西山氏

 具体的に「書く」ということに関して、積極的に取り組まれていることはございますか。

庭野学校長

 授業の中でも結構書かせているよね。

岡田先生

 そうですね。「自力解決の時間」が授業の中にあります。板書計画を立てるときは、基本的に最初に「学習問題」を出します。次にその日の「めあて」があって、その後に「自力解決の時間」があります。その時間では、自分の考えをノートに書く、最後にその日のまとめや学習の感想をノートに書く、という流れが定着しています。ですからできる限り、授業の中で「自分の考えを書く時間」というのは取っています。発表についても、うまく言えなくても、途中まででいいから自分の考えを言ってみよう、と伝えています。もし途中までしか言えなかったら、その続きを違う子が考えてつないで言ってくれるよ、少しでもいいから(自分の言葉で)言おう、と。少しでも自分の言葉で伝える、自分で書く、ということに慣れるようにしたいと思います。「慣れ」は大事だと思います。

4) 「読み取る」ということ

庭野学校長

 例えばアイテム6年生の70p(「角柱と円柱の体積」「活用する力をつけよう」) ですが、ここに『しょうたさんの考え』『ゆうなさんの考え』という噴き出しがありますよね。こういう場面のときですね。

岡田先生

 こういう問題は全国学力調査のB問題に出てきますよね。でも、同じような問題を市販の問題集で見つけようとしてもなかなか見つからなかったんです。

庭野学校長

 教科書の中でも「Aさんの考え」「Bさんの考え」ということはやりますけどね。問題集の中でこのように載っていると、「なるほど、こういう考えで解いていかなくちゃいけないのかな」ということを自分で考えますよね。(人の意見や考えを)聞くだけではなく、自分で解くことで様々な考え方が出来るようになり、そのことを実感し、体得することに繋がるのだと思います。そういう点でアイテムはとても優れた問題集だと感じています。
 岡田が先ほどお話したように、子どもは読み取ることがなかなかできません。だから、文章を読んで解く問題をやらせたいと思います。例えばアイテム6年生122p、123p(「資料の調べ方」の「活用する力をつけよう」「チャレンジしよう」)のページを見たら、本校でも大方の子はやる気が失せるでしょうね(笑)。まず「(問題文を)読みたくない~」と思うと思いますよ。子どもは圧倒されてしまうんでしょうね。その苦手意識を克服させないといけない、と思います。加えてこういう問題(6年 134p「活用問題(2)」)ができてこないんですよ。でも、今はできなくても、どんどんこういう問題にチャレンジしていくようになればいいと思うんですよね。

5) 「学力を定着させる」ことの難しさ  ~「放課後学習」の意味~

庭野学校長

 子どもたちに学力を定着させることは難しいですね。それでも「学力を定着させたい」という思いは強くあります。なかなかそれが、ひと筋縄ではいかないことは分かっていますが。これは全国の先生方が日々考え、悩まれていることだと思いますね。が、何とかそこは工夫したいところです。
 このアイテムを使うと、少しはいろいろな考え方ができて、頭の中が柔らかくなるのではないかな。あらゆる方向から考える事ができるようになって、ひとまわりでもふたまわりでも大きな頭になるんじゃないかな、という期待をもって取り組んでいます。

西山氏

 通常の授業だけではなかなか定着しない理由はどこにあるとお考えになりますか。

庭野学校長

 原因として考えられる大きな要因は、「復習をしない」という点でしょうね。

岡田先生

 そうですね。教科書だけでは全く足りないです。教科書の中でも、基本的な練習問題がずっと載っていて、ポンと応用問題が出てくるときがあります。その時に、子どもたちを見ていてギャップを感じているなと思うので、その溝を埋めるための練習も必要だろうなと思います。

岡田先生

 「算数」では「放課後学習」を行っています。いっぺんに見ることは難しいので、3年生以上を対象に月単位で4年生、5年生というように区切って、放課後学習で補充したり練習問題をやったり、授業中に終わらなかった課題を行うなどしています。どうしても学年が上がってくると厳しくなるので、担任の先生にもお願いして、協力していただきながらすすめています。

西山氏

 自由参加ですか?

岡田先生

 自由参加ではないです。練習問題で正解率が8割に届かない子に対して、「放課後学習をします」と伝え、(会議がない日が中心ですが)日にちを決めて「この日にやりますから参加しましょう」といいます。学習内容は、授業で行った内容と同じような練習プリントを事前に用意します。例えば「小数の割り算」でしたら、割り算の問題を10枚用意して、10枚とも80点以上クリアできたら合格、という基準を設けてすすめています。単元にもよりますが、高学年で全体の3分の1くらいが受けていますね。5,6年生を一緒に指導するのはちょっと厳しいので、ひと月を2学年で割って、交互に補習(放課後学習)を行うときもあります。

庭野学校長

 「放課後学習」を受けている人数は多いですね。「算数」は「国語」と並んで保護者も大変関心のある教科ですから、力をつけてあげないといけません。保護者の方は、自分の子に対して、「本当に分かっているのかな」という不安があります。それはお子さんに対して「分かっていてほしい」との期待であり、すなわち学校に対しての期待でもあると思っています。保護者の方に、私たちの取り組みを少しでも理解をしてもらう努力を、学校側はしなくてはいけないと感じています。それを「算数」では、岡田先生を中心に行っているわけですね。

岡田先生

 ここで躓いたら、次の学年でもっと分からなくなってしまうだろうと思って、私たちも一生懸命にやっています。算数は全て繋がっていますので。

庭野学校長

 「算数」は、ある程度問題が解けてできるようにならないと、子どもは嫌になって放り投げてしまいます。そうなると、もう面白くなってしまいますよね。ひとつ躓いているところをそのままにしておくと、どこかでまたその躓いている部分が出てきます。そうしますと「わからない、わからない」の雪だるま式になる。そこを防ぎたいなと思います。

庭野学校長

 全ての教科を学級担任が見られるという点は、小学校の強みでもあると思います。中学校のように教科担任制になってしまうと、一度立てた学習計画を途中で変更するということは至難の業になります。授業の調整が難しくなりますからね。それだけ小学生には丁寧な対応ができる(可能性がある)ということでしょうか。カリキュラム上柔軟性を持たすことができるよさはあると思います。

アイテム算数について
1) アイテム導入のきっかけ

齊藤

 今年度はアイテム算数を全学年でご導入いただきましてありがとうございました。

庭野学校長

 数ある教材の中のひとつとして、こういう問題集があるのであれば本校でも使っていきましょう、という気持ちになりました。使っていくうちに、徐々に良さが分かってくるのではないかと思っています。岡田は本校で、算数指導の責任者をしています。子どもとたちの学力や状況、授業の取り組みを見て、具体的にどのような力が足りないのか、そこを補うためには何を行えばいいのかを考えています。教員が自分で問題を作ることには、限度があると思います。そんな時にアイテムを目にして「あ、これだ!」と思いました。
 導入の背景としましては、本校でも単元テストをはじめいろいろと行っておりますが、活用の力がなかなか身についていない、という点が大きな課題としてあります。アイテムは活用の問題を多く取り上げていますよね。本校の子どもたちには、この部分が必要だ!と感じました。岡田は1~6年すべての学年に携わっておりますので、詳しいことは岡田の方から話が出ると思いますが、岡田から「これ(アイテム)どうですか」と言われれば、「使ってみようか」という流れになりますよね。

2) 今求められている力をつけさせたい

西山氏

 実際にはどのような教材のどのような点でアイテムと比較、検討されたのでしょうか。

岡田先生

 本校には、問題集の種類はある程度揃っています。今までは、それらを参考にしてプリント作成を行っていました。しかし実際に学力調査テストの内容(問題)を見ますと、「活用の問題」がかなり出題されております。基本的な問題の後に、問題をよく読んで、自分で考えないと解くことが出来ない問題が必ず出題されています。市販のプリントですと、公式に当てはめて計算するような基本的な問題はあります。でも少し問い方が違ったり、既習事項を使い、もうひとつ先の事を考えるという問題は殆どありませんでした。このアイテムを見ると、教科書内容にとどまらない問題、考えないと解くことが出来ない問題、よく読まないと解くことが出来ない問題があります。その点がとてもいいなと思いました。今まさに求められている力、学力調査などで問われる力に繋がっているなと思います。

西山氏

 問いかけが変わると、(子どもは)問題が解けなくなったり戸惑われたりするものなのですか?

岡田先生

 そうですね、なかなか厳しいですね。ちょっと発問が変わると解けなくなることが多くあります。逆思考の出題をすると、話をよく聞いていないため、前に出た問題と同じようにそのまま答えてしまうようなところがあります。同じパターンでしか答えを出せない傾向があって。
 アイテムは「活用の問題」があるという点以外にも、個人の学力差に対応出来るところも利点です。本校には、教科書内容は理解させたいという子どももいれば、教科書内容はもう理解できているので、もう少し先までやらせてあげたいという子もいます。人数としては「先までやりたい子」の方が少ないのですが、そういう子のために問題を用意するのは、限られた時間の中で大変難しかったんです。アイテムですと「ちょうせんしよう」「チャレンジしよう」の問題がありますので、そのページを充てる事が出来る、という点がとても助かっています。
 全体指導では、「活用する力をつけよう」までは指導しましょうと、先生方の中では共通理解してすすめています。「チャレンジしよう」については、やれる子はやってもいいし、無理にやらなくてもいいということにしています。

3) アイテムの活用場面として

西山氏

 全体指導というのは、授業で取り上げるということですか?それとも家庭学習、宿題を含んでの事ですか?

岡田先生

 授業で扱うことを基本にしていますが、宿題にすることもあります。授業の中だけでは時間が足りないので。宿題にしたときは、なるべくその後授業で扱うようにしています。実際全てを取り上げることは難しいので、間違いが多かった問題を次の授業で取り上げて、もう一度全体指導するというやり方が多いです。

西山氏

 授業では、その中で個別に解いていくというやりかたですか?それとも一問を取り上げて授業で広げるやり方ですか?

岡田先生

 大体は「今日はアイテムの▲ページをやりましょう」と言って、個別に解決する時間をまず作ります。難しい問題は時間を区切って、(個別解決の後)全体で指導をします。自分で解ける場合には、「解けた人から先生のところにおいで」と言って個別に丸付けをすることが多いです。

西山氏

 その中で「活用する力」まで丸つけできますか。

岡田先生

 「活用する力をつけよう」のページになると、かなり間違える子どもが増えてきます。このページにはちょっと難しい問題や、教科書の単元指導がある程度進んだ後でないと解けない問題があります。ですから、単元指導がある程度進んだ時点で「ではやりましょう」と指示しています。

岡田先生

 私も初めて全国学力調査のB問題を見たときは、「うゎ~、これは子どもが見たら気絶する!まず問題を読まないだろうな」と思いましたから(笑)。問題文を読まずに、表や図をみて勘で答える子が絶対にいるだろうな、と思っていました。普段短い文章しか読んでいなくて、いきなり長い文章を読んで問題に答えなさい、と言われたら見ただけで気絶する勢いだろうな、と思いましたね(笑)。だからまずは、そういう問題に慣れていくことが大事だろうな、とその時思いました。その手段のひとつとして、アイテムのような問題集が必要だと感じました。「計算しましょう」「式を書きましょう」「数字を当てはめましょう」だけではなく、問題を読んで答える、また読んで答えるというトレーニングが必要なんじゃないかな、と思います。

4) 6年生まで通して使う意味

西山氏

 アイテムを1年生から6年生まで全ての学年で使われているというのは、そういう意味があるんですね。

庭野学校長

 はい。低学年からトレーニングを重ねるという意味合いを含んでいます。
 アイテムをやるといっても、取り組む学年と取り組まない学年があったら、子どもたちの中に積み重なっていかないですからね。小学校では、ひとりの先生が複数の教科を担当していることを考えると、教科の問題を自分で作る時間がそれ程多く取れないです。だから、色々な問題集を参考にしようとして手にとりますね。学校でも購入しますが、学年ごとに問題集はバラバラです。ドリルはそれでも大きく違わないですが、アイテムは系統立てられた問題集ですし、他の問題集に比べてはっきりとした特色を打ち出していますから。これは他のものとは明らかに違うと思います。だから一貫して、1年から6年まで通して使わないと効果は表れないと思いました。そして何年か継続して使い続けないと。

岡田先生

 それは本当にそう思います。今年はまだ初年度なのでアイテムを「難しい」と感じている子どももいると思いますが、慣れていけば難しいと思うこともなくなってくるかな、と思います。問題も読み慣れてくれば、ですね。ある程度力のある子は、今でもやっぱりおもしろいと思うみたいです。単純な練習問題と比べるとね。

庭野学校長

 欄外にドリルも付いているからね。これはこれとして使えますよね。

岡田先生

 そうですね。ドリルは比較的宿題中心に使っています。ドリル用のノートを別に作って、「今日は計算ドリルの何番が宿題ね」というように、今まで使っていたドリルと同じようにも使えるから助かるわ、1冊で済んじゃうし、と担任の先生からも言われています。

庭野学校長

 そうですよ。アイテム以外にまたドリルを買わなくてはいけないのでは、保護者の負担が増えますから。
 1冊でいいところはとても魅力です。

岡田先生

 お値段はドリル3学期分を購入する値段と同じくらいですよね。1年間使えますから。2倍いいですよね。
 復習もできますし、予習もできますし。

5) 子どもたちを取り巻く環境

西山氏

 保護者の方の反応はどうですか。

庭野学校長

 そこまで保護者の方の意識が行っていないという点もあると思います。

岡田先生

 子どもと一緒に(アイテムを)やっている保護者がどれだけいるかということにもなると思いますが。

庭野学校長

 そうですね、その点も大きいですね。子どもの学力については気にされていると思いますが、具体的に向上させて欲しい、という声はまだ聞こえてこないです。今学習している内容を分かるようにして下さい、ということは言われますが。だからと言って今以上のレベルにして欲しいという声はあまりないです。学校説明会で「この学校では、学力調査の結果はどうですか」という質問を受けることはあります。学校選択制のもと、学校を選んで入学してくるお子さんの保護者はそうだと思います。
 本校も含めて、品川区は7割の子どもがもともとの学区、指定地域の学校に通っています。学校選択制が導入され10年近く経過し、制度としては定着してきておりますが、7割のお子さんは地元の小学校に通っているというのが現実ということですね。2~3割のご家庭は、2校見比べて選択し、入学しているようです。3校以上を比べて選択されるご家庭は殆どいないのが実態ですね。また、「希望通りの学校に入られましたか」という調査の結果で、「不満が残る」と答えた方はわずか1%でした。品川区についてはそのような結果になっています。これは毎年保護者アンケートを行っていますので、詳細は区教委へ行けば分かると思います。本校についても7割は地元のご家庭です。

岡田先生

 もともとは、子どもには伸び伸びと過ごしてほしい、と望むご家庭が多い地域ですね。

庭野学校長

 (勉強よりも)伸び伸び運動させてほしい、ゆったりと過ごさせてほしい、という要望が比較的強いのかなと思います。低学年の保護者の方は少し変化してきているかもしれませんが。

齊藤

 保護者の方が過剰にピリピリされているよりはやりやすいかもしれないですね。

6) 家庭学習の重要性

庭野学校長

 家庭学習は、本校の課題のひとつでもあります。家庭でお子さんの勉強をあまり見ていただけない、ということにもつながりかねないですから。学校としては、もっと家庭学習の時間を作ってもらいたいし、保護者の方に勉強を見てもいただきたい、という思いはあります。家庭学習の時間がとにかく足りないと思います。「学年×20分」と一般的には言われますが、なかなか本校では実行されていないのが現状ですね。そして、9年生になって急に慌てることになります。今の時期、9年生は必死です。かなり必死になって勉強をしていますが、それでも時間が足りません。9年生を担当している先生方は、放課後指導だけでは足りず、土日も使って勉強会を行うなどしています。生徒も結構参加していますね。でも、もっと早い段階から始めていれば、この時期になってこんなに焦らなくてもいいのになぁと思います。家庭学習の進め方は本校の悩みでもあります。

齊藤

 家庭学習については、新学習指導要領でもポイントのひとつになっていますよね。

庭野学校長

 そうですね。家庭学習の重要性については、学校側ももっと保護者の方に伝えて、理解していただかないといけないですね。宿題に限らずしつけについても、家庭に何かを求めるということを、保護者の方はあまり望まれないですね。負担に感じるところもあるようです。それでも伝えていかなくてはいけないのですが、伝え方は難しいです。こちらの意図を理解くださる保護者の方も多くいらっしゃいますので、粘り強くやるしかないかな、と思っていますが。
 子どもたちの中には、中学生になると途端に勉強を毛嫌いする子が出てきますよね。「数学」は、急に抽象的な考え方を取り入れる教科になりますので特にそうです。そのあたりは折角「小中一貫教育」という場を与えてくださいましたから、これからいろいろと研究をしていきたい点ですね。5年6年生から抽象度を増した学習も取り入れていくなど工夫をして、独自のカリキュラムをもっともっと構築していきたいと考えています。

「品川区 小中一貫校 平塚学園」がこれから目指していくもの

庭野学校長

 品川区自体が、どの学校も小中一貫教育を行う、ということを既に実行しています。(小学校と中学校で)施設は別々であってもグループをつくって、先生方も連携をしながらですね。中学校の先生方は教科担任制ですが、研究の教科を限定しますと、関わる先生方の数が限られてしまいます。でもどの教科も、というと今度は小学校の先生は全ての教科に参加しなくてはなりません。その辺りがとても難しいところですね。ひと学年のクラス数が多い学校はいいと思いますが、本校は単学級の学年もありますし、教科別の研究は厳しいですね。先生方の数が少ないわけですから。教科研究に携わる先生の数が少ないと、出てくるアイデアも限られてしまいます。いろいろ議論を戦わせるという意味でも、ある程度の人数(の先生)で行って欲しいですね。本校ももっと在籍児童数が増えて欲しいんですけどね。そうすれば先生の数も増えますから。
 本校は母体校の規模が小さい、という点が品川区内の他の小中一貫校と大きく異なる点です。本校の成り立ちとして、荏原第二中学校と平塚中学校がまず合併し、荏原平塚中学校になりました。その2年後に荏原平塚中学校と平塚小学校とで、現在の荏原平塚学園がスタートしたわけですが、どの学校も小規模校でした。平塚中も平塚小も単学級、荏原第二中は2、3学級ありましたけれどもね。それぞれの学校の意識も違うし、進学地域(学区)も異なる学校同士でしたから。もともと平塚小学校の児童は、指定地域では荏原第一中学校へ上がって行きます。平塚中学校へは普通は進まないんですね。そういった点でもちょっと特殊です。だから6年生から7年生への進学率を100%に近づけるというのが目標です。現在は6割くらいの進学率に留まっています。どうしてそのまま本校の7年生に進んで行かないのか。それは親の代から脈々と続いていて、自分が通っていた母校に子どもも通わせいという思いがあるんでしょうね。ただ、「小中一貫校構想」が、はっきりと打ち出された後に入学してきたご家庭の意識や考えは違うと思います。ですから本当の意味で結果が出るのは6年後になりますね。6年後が勝負です。それまでに様々なことを培っていかなくてはいけないですね。
 子どもたちが世の中に出て、本当に役立つ、自分で役立てるそういう力を「算数」「数学」できちっと培ってもらいたいと思います。「図形」でも、立体的に3次元で物事を捉えられる力、表やグラフを見ていろんな読み方ができる力、考え方ができる力。そういうおもしろさというのは、「算数」の中にたくさんあると思っています。それもほんの一部ですが、そういうことだけでも身につけてくれたらいいな、と思います。「算数」だけでなく、他のどの教科にも広げていけたらいいですね。ただ、指導する方が意識する必要はあります。小学校は発表する時間、子どもが表現をする時間をまだ取れますが、なかなか中学校になると時間の制約があって、子ども発表の場が少なくなってしまうんですね。それでも大分多くなってきました。小学校の授業を見る機会が(中学校の先生にも)増えた影響だと思いますが。
 (小中の先生方の)職員室がひとつ、どんな会議もみんな一緒、という環境は本当にいいですよ。小学校と中学校の情報がみんな共有できますから。これは大きいです。ちょっとした会話からでも「えー、そうだったの」「そんなことがあったの」と気づかされたりビックリしたりする状況がたくさんあります。とにかく物理的に何でも一緒にしないとなかなか人の意識は変わらないですよね。自分で思っていても、積極的にそれを行動で表していかないと周りは変わっていきません。自ら行動しないといけない、自ら動くことが、環境として設定されていたら精神的には楽ですよね。そこから生まれるエネルギーは大きいと思います。逆に余計なエネルギーを使わなくてもいいですよね。別々の建物であったら、例えグループを組んで交流しようとしても、行き来する時間は捻出しなければいけない、どんな事を(小学校と中学校で)話し合わなくてはいけない、と双方とも構えてしまいますしね。本校の職員室では構える必要はないですからね。雑談的な会話から入っていける、このハードルの低さが一貫校の好さであり大きな違いですね。これで年月が経っていくと、もっと多くのことがスムーズに進むようになると思います。そういった意味ではまだ職員室もひとつになって日が浅いので、「えーー?!」とお互いに感じている部分は正直ありますからね。小中一貫校の準備期間としては、3年も4年もずっと協力し合って進めてきた仲間なんですが、それでも分かり合えない部分がありますから。
 品川区はメディアでもよく取り上げられて、色々な方々から「大変ですね~」と言われますけれども、日々、一生懸命励んでおります、とお答えしています。

岡田先生

 この学校にいらっしゃる先生方がいい先生ばっかりなので。私が「アイテムやってみようよ」と声がけすると「うん、いいよ」と言ってくれる先生がいらしてくれるわけですから。

庭野学校長

 それは、今まで岡田が本校で培ってきたもの、算数に対する見方、考え方、やり方に対するまわりの理解と人間関係です。「岡田先生がいうんだったら間違いないからな」と思わせるものがあるんですよね。そういう力は意外と大きいんですよね。これは多分学校だけでなく会社でも同じじゃないですか?やっぱり信頼できる人がいうことはひとつやってみよう、と思いますよね。先生方にはそういう気持ちになってもらいたいな、と思いますね。私はこれがいい、と主張するばかりではなくて。

西山氏

 小中一貫サミットのプレゼンテーションの中ではお話をうかがう機会も多々あるのですが、こういった生の声を直接うかがえることが少なかったので、いい機会をいただきました。ありがとうございました。

齊藤

 ありがとうございました。

*荏原平塚学園は、1月22日(土)に開催され本機構も参加しました『教育フォーラム in品川』の会場校でもありました。

*取材にご協力をいただきました品川区小中一貫教育荏原平塚学園様には、心より感謝御礼を申し上げます。

*本記事は、学校様のご了解をいただいた上で掲載いたしております。外部転載等につきましては固くお断り申し上げます。

学校
荏原平塚学園は、22年度より、品川区で4校目の施設一体型小中一貫校としてスタートしました。
資料

品川区 小中一貫校 荏原平塚学園
「学校案内」PDF

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資料

「好学」「誠意」「鍛練」
荏原平塚学園の教育目標です。

資料

少人数指導の様子です。

資料

6年「板書計画」F
『細かい部分ですが、筆算の繰り上がりの書き方なども共通にしておきますと、学年が上がってクラス替えをしてもずっと同じように指導をしていけます。』(岡田先生)
(画像クリックで拡大PDF)

資料

荏原平塚学園「算数指導のポイント」
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資料

板書例①
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資料

板書例②
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資料

板書例②
(クリックで拡大PDF)

資料

3年理科「はかり」の授業より
「理数教育」の充実という観点から、「算数」「数学」と「理科」の教科間でのすり合わせも。

資料

授業ノート②『自分の考えと、友だちの考えを書く』
ノートには「学習問題」→「めあて」→「自分の考え方」、そして「友だちの考え方」が丁寧に整理して書かれています。

資料

授業ノート③『その日の感想を書く』
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資料

学習風景

資料

「およその数」を求める教材

資料

児童の「アイテム」算数
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資料

「アイテム」の「計算ドリル」専用ノート
(クリックで拡大PDF)

資料

「形をつくろう」での授業風景

パンフレット「アイテム算数のご案内」

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