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  ホーム 学校授業のスパイス 「アイテム」企画特集 連動企画 日本教育新聞 2015/01/26付 連動企画vol.2  

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「アイテム」企画特集 連動企画

萩原良太先生の算数4年の授業
萩原先生は、昨年度まで算数少人数の担当。習熟度別コースの指導計画も、萩原先生が、アイテムを使って緻密に計画を練り作成しました。
「じっくりコース」は、一部アイテムを解くことが厳しい場面もありますが、教員と一緒に解いていくような感じで進めています。
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少人数指導の中で生きるアイテム(東京都渋谷区立 笹塚小学校)

 東京都では平成27年度より、小学校算数の加配を受ける学校を対象に習熟度別指導を実施しています。渋谷区立笹塚小学校様では、習熟度別コースの中でアイテム算数を日常的に活用いただいています。算数授業においての視座、また、アイテムを使うことの意味を学校長 染谷由之先生から、現場での具体的な試みについては教務主幹・算数主任松村信之介先生にお話を伺いました。

日本教育新聞2016年1月18日付「企画特集」と併せてご覧ください。




習熟度別コースの中でのアイテム

−取材では、4年生萩原良太先生の授業を見学させていただきました。

松村先生(以下M): 萩原先生は本校で一番長く算数研究を推進されてきた教員です。昨年度まで算数少人数の担当をされていて、習熟度別コースの指導計画もこのアイテムを使って緻密に計画を練り作り込まれてきた方です。

−今日は4年生算数「長方形と正方形の面積の求め方を考えよう」という授業でしたが、授業の終盤、10分間アイテムの練習問題をやらせるという使い方をされていました。それとは別に、宿題でも(今日、授業で使った所とは)違うページをやってくるというような使い方をされていましたね。

M: 本校では、基本的に「アイテムは主に授業で行う」という使い方で進めています。今、6年生の担任をしていますが、「速さ」の単元では、4つのステップの中の「チャレンジコース」を担当しています。授業は、教科書内容を35分程度で終えてしまい、残り10分はアイテムの問題を行っています。場合によってはアイテムの問題も終わってしまう子がいるので、さらに自分で用意しておいた問題をやります。受験問題に近いものや、文部科学省の全国学力学習状況調査の問題をもってきたり工夫しています。教科書の問題⇒アイテム⇒補充問題。この流れで大体チャレンジコースは進めていますね。真ん中の2コース「かくじつコース」は、教科書の問題⇒アイテムで大体終わります。一番習熟のゆっくりした「じっくりコース」は、一部アイテムを解くことが厳しい場面もありますが、教員と一緒に解いていくような感じで進めています。
 どんなコースであっても、アイテムの最初の2ページ「たしかなものにしよう」までは単元が終わるまでにやり、活用問題とチャレンジ問題のページはコースによって、または、単元によって強弱をつけて行っています。欄外の計算問題は別に宿題として、「今日は計算ドリルの57番、明日は60番」というように、日々、計算ドリルとして進めています。

−チャレンジコース、かくじつコース@A、じっくりコースの進め方はどの学年も、ですか?

M: アイテムを使っている学年は、全部習熟度別によって使い方を変えています。コースによって先取り学習をするのではなく、同じ時間に同じ単元内容を学習するのですが、年間の指導計画表を元に、取り組む問題や内容に差をつけています。そのためにアイテムを使っています。アイテムのような教材を活用し、練習問題の内容に差をつけている感じです。

−習熟度別指導で先に進む学校もあるけれども、笹塚小のスタイルは学習内容をより深めるやり方なのですね。だからこそ、少し難しい課題や教材が必要になってくる。

M: 本校ではアイテムのような問題がないと、逆に手を余らせてしまう子どもが多いですね。今まではどちらかというと、習熟がゆっくりな子たちをどうするか、という意識が強くありました。本校の場合、じっくりコースの子どもも勿論ですが、チャレンジコースの子どもも、十分その子に合った学習ができるような手だてを考えなければならない。チャレンジコースの子たちにとって、アイテムは非常に力となるものではないかと思います。私は、23区内の小学校2校を経て本校へ来ました。前任校で、文京区からいらした先生が以前アイテムを活用されていました。その先生から「こういう教材があるよ」と紹介してもらい、全学年ではないですけれども学年で導入し、一緒にやっていたのです。

−そうですか。ではその問題の特長もよくご存じだったのですね。チャレンジコースの子は、自分の力だけでアイテムの一番難しい問題も解いてしまうのですか。

M: はい。解いていますね。分からない場合は解答解説を見て、なぜこの答えになるのかを自分で考えたりしています。あとは友達に聞いて、やり方や解き方を教え合っていますね。そのような感じで。どんどん進めているように思います。
 本校で素晴らしいと思うのは、アイテムが授業の中に位置付けられている、という点です。他校から異動してこられたばかりの先生や、まだ進め方が分からなかったりうまく活用できない先生もいますが、本校には学年とコースごとに指導計画表があります。単元の第○時は教科書の○ページと練習問題○番をやりましょうという計画を算数指導について力のある先生や、算数少人数指導の先生がかなり綿密に立てています。その中にアイテムの問題も位置付けて(明記して)ありますので、計画通りに行えば算数指導に漏れがないようにカバーされていますね。


習熟度別指導でのアイテム活用のポイント

−かなり細かな指導計画書ですね。○ページの○番をやる、というように記されていて。

M: アイテムを使う前は、おそらく教科書の指導書に沿った流れで、「チャレンジコース」も「じっくりコース」も同じ問題をやり、あとは教員がそのコースに応じたプリントを作り、やっていたのではないかと思います。前任校もそうでした。このアイテムを導入したことで、アイテム1冊で4コースまかなえるようになりました。ひとつ軸ができたように感じます。授業の準備の面でもとてもスムーズなりました。

−アイテムを習熟度別指導の中で活用するポイントというのはどこでしょうか。

M: 指導計画ですね。その中にしっかりとアイテムを位置付ける、ということです。指導計画の中に組み込んでいかないと、時間が余った時にやる程度になってしまいます。最初から指導計画の中に位置付けられていることで、『教科書+アイテム』で算数の力を付けるということが日常になります。1時間1時間の流れの中に、当たり前のものとしてアイテムが入ってくるわけです。子どもたちにも、「教科書が終わったら次はアイテムだ」ということを習慣づけてやっていますね。だから、授業の流れの中にアイテムがあることが定着しています。今はもう、比較的その流れがスムーズに行われているように感じます。

−4年生の授業を拝見した際、ごく自然に子どもたちが机の上に教科書とアイテムを置いて授業に臨んでいましたよね。算数の時間は教科書と同じようにアイテムを開くということですか。

M: そうです。「算数の授業で使うもの」というイメージが子どもたちにはあるようで、こちらが言わなくても机に並べています。1時間の授業の中で10分〜15分はアイテムをやりますから。アイテムは授業で使うものということは、学校全体の共通認識ということです。

−学校全体で取り組むことに意味があると。

M: アイテムには少し難しい問題が入っているので、宿題では手が止まってしまう子もいます。ちょっと分からないときは友達に聞いたり、教員に「この問題分からない」と質問してもらえると、ヒントを出すことができます。アイテムは学校の中できちんと位置付けたほうが効果的ではないかなと個人的には思っています。

−チャレンジの問題を宿題に出されるということはあまりないのですか。

M: 出すこともありますが、基本的には授業の中で取り上げますね。宿題には、基礎・基本の「練習しよう」のほうが、先生によっては出すことが多いかもしれません。

−5、6年生ですと、アイテムの「チャレンジしよう」の問題をいきなり質問に来られたらちょっとドキドキしませんか?

M: そうですね。(笑)解説を見てやっと分かるときもありますから、いきなりポンと聞かれてすぐ答えられるかというと結構厳しいです。活用までは答えられると思いますが。私は一応、算数の指導を少し勉強させてもらってきましたが、あらかじめ指導計画を見て、教材研究の一つとしてアイテムの解説を読んで準備しておくのも手ではあります。


習熟度別指導の良さ

−現在6年生は2クラスですが、算数の場合にはそれを4クラスに分けるのですね。6年生の担任の先生が2人と少人数担当、その他は区の加配の方がやられているわけですね。

M: 本校の場合、区で来ていただいている講師の先生が基本的にはじっくりコースをずっと、一定して持っていただいている状況です。そして基本的に残りの3人でローテーションをするような形です。

−クラスの入れ替えや先生の入れ替えというようなことはどれぐらいの頻度でやられているのですか。

M: コースは単元ごとに入れ替えています。ワークテストをやる際にレディネステストを行うのですが、テストの裏に次はどのコースがいいかという希望を書くようになっています。レディネステストの状況で、子どもたち自身が次はチャレンジコースにしようか、かくじつコースにしようか、じっくりコースにしようか、自分で丸をして子どもたち自身が選んでいる感じです。子どもたちはもうコース選択には慣れているようで、レディネステストの状況で自信のあるときはチャレンジコースを選ぶ子が多いですし、自信がないときはじっくりコースを選ぶ傾向にはあります。よく、じっくりコースは勉強ができないコースで恥ずかしいというように思うような学校がありがちですが、本校にはそのようなことはありません。それはとてもいいなと思う点です。本当に自分に合うコースを選べばいい、じっくりコースに行くからといって、何か引け目があるような感じはありません。どのコースでも子どもたちは伸び伸びとやっています。

−本人の希望が全部通るわけですか。

M: 本人の希望とテストの結果と、人数のバランスによります。教員は、子どもの希望とこちらの意図をくんで決めているということです。

−新しく来られた先生というと、ここまできちんと算数をやっているのに慣れていらっしゃる先生ばかりではないので、新しい先生がたに対しては結構気を使われるのではありませんか。

M: 新しい先生方には、まず本校の習熟度別指導の位置付け、やり方を説明します。年度初めには顔合わせの職員会議があります。そこで年度の教育方針、各教科をどう進めるかというのを毎年提案していただく中で、算数の指導計画はアイテムを授業の最後に必ずやって力を付けていくという流れですというように確認をして4月の始業式を迎えるようになっています。

−先生が習熟度別指導のここがいいと思われる所はどんな所でしょうか。

M: その子その子に合った内容や深め方ができる点ですね。学級全体で授業を行う良さももちろんありますが、どうしても待ってしまう子、または、ついていけない子が出てきてしまいます。習熟度で分けたほうが、その子の実態に応じた伸ばし方がうまくできます。進みの早い子にもじっくり進めた上がる方がいい子も、習熟度別指導のほうがその子なりに伸ばせるということです。

−これからの笹塚小学校での課題はどういう点だと思われますか。

M: それぞれの単元に対して活用問題、応用問題がありますが、今まではバラつきがありました。例えば、笹塚小学校の6年生「速さ」の単元であれば、授業の中でこのような活用問題を行う、というストックを積み重ねていくことでしょうか。どの学年をどの先生が持っても、この活用問題を使えばいい、というように、笹塚独自の活用問題を開発できたらいいという事が去年から課題として出ています。そうすれば、コースごとにもっときま細やかな指導ができると思います。
 もう一つは、この(習熟度別指導の)質の維持ですね。これは簡単なことではありません。
依然として、「計算ドリルだけでいいのではないか」とおっしゃる先生も中にはいらっしゃいます。そこはアイテムの良さと、継続してきたことで今の学力が付いているのだということをあらためて校内で確認し、それをきちんと続けていくということが大事かと思います。


アイテムの効果

−実際アイテムの効果としてはいかがですか?

M: 全国学力状況調査でも、B問題、いわゆる活用問題では平均よりもずいぶん上です。
授業の中で活用や応用問題にまでしっかり触れてやっているという流れ、その積み重ねがきちんと結果になって表れているのではないかと思っています。もちろんアイテム効果もあると私は思っていますが。

−最後にお子さんはどうですか。アイテムで楽しそうにやっていらっしゃいますか。

M: 子どもによっては、最初の2ページの問題のほうが好きな子もいますし、活用問題がいいなという子もたくさんいます。中には自主的には全くやらない子も、少数ですがいます。でも今のところは、授業の中にきちんと位置付けされているので、本校にとっては大事な存在ではないかと思います。

−都内でもっとアイテムを知っていただきたいですけどね…

M: アイテムを知らない学校も先生もまだ多いですよね。算数を勉強している私も知りませんでした。ある先生に紹介してもらって初めて知りました。区で行っている小学校教育研究会の場等で紹介していたりすると、同じ算数を研究しているそれぞれの学校の先生の目に触れて、これいいなと思ってくれる先生もいるのではないでしょうか。
 あとは使い方ですよね。ドリルと違い、全部やらなくてもいいのだという感覚と活用場面のイメージが必要ですね。その当たりを引っ張ることができる、こういう計画を立てることができる先生がいるといいと思います。その習熟度別指導での使い方、活かし方が少しでも広まってくれればいいと思います。

−大変参考になります。ありがとうございました。