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「アイテム」企画特集 連動企画

学力向上通信vol.25「三重の学-Viva!!」11月号。発行者:三重県教育委員会「学力向上緊急対策チーム」より



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子どもから引き出す学び合いの授業(三重県東員町立神田小学校)


 三重県北部にある東員町立神田小学校。アイテム算数全校導入2年目の学校です。今年度から全学年で算数科少人数指導を実施されています。「学び合い」と「少人数指導」を両立させる極意が見えてきます。
*6年A組(ぐんぐんコース)「比例などの関係を使って問題を解こう」という課題 何本かの釘の重さを実際に図り、本数と重さの表を用いて釘の本数の求め方を考える授業の後の対談です。

日本教育新聞「企画特集・学力アップを実現する算数指導のあり方とは」と併せてご覧ください。
  *日本教育新聞「企画特集」2017年1月16日PDF



■全学年算数科少人数指導について
 

まず、貴校での少人数指導についてお教えください。

日置幸嗣校長先生: 本校は今年度、「わかる授業促進事業」の指定校として三重県から人的な加配をいただき、全学年で算数科少人数指導に取り組んでいます。1年生はT・T形式、2年生は3クラスを均等割りで4分割、3年生以上は児童の希望を聞きながら習熟度別にコース編制して指導する方法で、本校では「学び重視型算数科少人数指導」と呼んでいます。

 「学び重視型算数科少人数指導」には、じっくりコースとぐんぐんコースがあり、担任がじっくりコース、算数科少人数担当の中村先生が、高学年のぐんぐんコースを担当しています。
じっくりコースは基礎・基本に時間をかけて進めます。ぐんぐんコースは基礎・基本を踏まえ、できるだけ多くの問題に触れる時間をつくります。このことを保護者の方にお便りでお知らせして、コースの希望を取ります。さらに、単元が大きく変わるタイミングで変更の希望を取って再編制します。図形や数量など、領域によって得意・不得意が変わる子もいますので。

 じっくりコースが学級の1/3、ぐんぐんコースが2/3程度の配分が理想です。
じっくり学んで力を付けたほうがいいなと思う子どもたちについては、よりその子どもを理解している担任が担当します。なおかつ、人数は目を行き届かせるために少ないほうがいいだろうと、この配分にしています。なかなか思い通りの配分にならない場合もありますが。

【アイテムの単元構成】 各単元は、4つのステップで構成されています。 本校では、最終的に取り組む内容や到達点を2コースともほぼ同じにしています。子どもの中で優越感や劣等感など、差別意識のような感覚を持つことがないように配慮しています。最低限「ここまでは身に付けさせたい」という部分は同じにしていますね。ただ、当たる問題数、解かせる問題数に差は出てきます。解く時間が早ければ、多くの問題または活用問題に当たるチャンスは増えますから。じっくりコースにも基礎・基本をしっかりと身に付けて難しい問題にも挑戦させたい、という願いがあります。

じっくりコースでも活用問題に触れるのでしょうか。

校長: そうですね。ジャンプの課題に触れさせたいです。かつて本校は「学びの共同体」を9年間研究・研修していました。その考え方や意識は、現場で今も持ち続けていますが、教科書だけで子どもたちの挑戦意欲を作り出すことはなかなか難しいです。先生方でジャンプの課題となる問題を作ろうとしているのですが、日常的に作るとなると多忙な中では難しいです。そこで、アイテムの「活用の問題」をジャンプの課題として工夫することでそれを補っています。子どもたちがすぐ「分かった!」と言えないような問題に取り組ませていこう、という思いで先生方は日々進めています。

 

6年生対象のアンケートでは『難しい問題を解くことが楽しい』と答えた児童のポイントが高いですね。これはチャレンジ精神が確実に付いてきている証拠ですよね。

校長: はい。嬉しい結果です。本校は、年間5回ほど、学力向上アドバイザーの訪問を受け、算数科少人数指導についてご指導いただいていますが、先日、教科書通りの授業展開では、(スモールステップ過ぎて)子どもたちが飽きてしまっていると指導を受けました。私たち教師は、ハードルの高い課題を突然与えると、学びの土俵に乗れないのではないかと危惧してつい易しい課題から始めてしまいがちです。アドバイザーからは、既にその心配はないと言われました。教師は、子どもが今どの段階にいるのかを見抜く力を付けていかないといけないですね。加えて、アドバイザーの先生にはかなり厳しいご指摘も受けました。最も子どもたちに力が付かない授業とは、教師が教科書どおりに講義をする教え込みの一斉授業だということです。
 私たち教師は、そこからなかなか脱却できていません。具体的に指導されていることは、ペアやグループで活動させること。個々の考えは、その中で出来上がっていくと言われています。
中村先生は先頭を切ってその考え方を取り入れ、4月から取り組んできた成果が結果として出ています。子どもたちの持ち味や学年のカラーもありますが、子どもたちの関係性がとてもいい。だから、ペアがうまく成立していて、見ていてもいいなぁと思いました。

■子どもから引き出す「学び合い」の授業
 

いつも本時のようにひとつの問題とじっくり向き合う指導をされているのですか?

中村文彦先生: 今日はいろいろなパターンと多様な考え方を引き出したいと思ったので1問に絞りましたが、授業の中で習熟の問題を何問かやることもあります。1枚のワークシートにグループ内の考え方を書かせる。または、ノートに自分の考え方を書いてグループ内で交流し、発表させるというパターンもあります。子どもたちは、ペアで話し合うことにもう慣れていますね。ただ、今日の授業では、それぞれの考えをペアで擦り合わせ、納得した考え方を出しなさい、というルールにしました。すると発表の時、ひとりがみんなに向かって説明をして、もうひとりはその内容を黒板に書く、という役割分担が自然に出来ていて驚きました。新たな発見ができて嬉しかったですね。

今日の授業でも、先生は随分と我慢していましたよね。じっくり待って、子どもたちに気付かせる。これが難しいんです。全く敬服に値しますね。これからの時代に必要な教師の姿だなと思いながら、拝見しておりました。
子どもが自分たちで解いて発見していく姿は、「分かっているな」という感じが見受けられます。色々な考え方が出た後に、それぞれにどういう共通点があるのかをどんどん発見していきましたよね。あの授業の流れはすごいと思います。その力が、このクラスには付いているんだと気付かされました。

校長: そうですね。教師が教え込む授業は、子どもたちにはつまらないでしょうね。自らが学ぶことをしないから。今までは平たんな授業が多かったのですが、少しずつ改良しています。少し難しく、挑戦を必要とする課題を授業で与えてみて、多様な考えを子どもたちから引き出す。最後は合理的で、納得のいく考え方を子どもたちが自ら見つけられる授業になるといいですね。この方法がいいからこれを覚える、ではなくて、理屈や関連性を理解していないといけません。それらを理解して初めて使える力になると思います。そのような学びが、今日の授業にはあったなと思いました。

中村: 小学校の算数は、立式して答えが合えば正解。テストなどはまさにそうですね。自分が授業で気を付けている点は、単に式を書かせるのではなく、解き方を書くように、と言っています。そうすると、だんだん論理的な文で説明が出来るようになります。

校長: 実際に、全国学力・学習状況調査では、そのような力が求められます。今日のような授業を重ねていくと、そこへ繋がると思いますね。みんなで考えて、典型的な説明をきちんと押さえていく。それが子ども同士の学び合いになるのだろうと。全員が全員その状態まで力がついているわけではないので、困っているときは教師が横につく場面もあります。しかし、グループや友達との中で学ぶことこそが子どもの力になると考え、次のような『全校児童目標』を設けています。

 この『全校児童目標』は、9年間の「学びの共同体」研究に取り組んだ成果として、子ども自身がめざす子ども像を日常的に意識できるように設けています。「学び合い」においては、まず人の話をしっかり聴くこと。これが基本です。相手を思いやり、大切にする姿勢ですね。それから、自分の弱みを隠さずに、分からないことを人に分からないと尋ねられること。そして、尋ねられたら優しく教えること。最終的にはみんなの前で自分の考えをしっかり話せるようになろう、としました。

 3年前に、「学びの共同体」の研修は一旦終えましたが、その理念はずっと引き継いでいます。そして、3年前からは現代的な課題として明らかになった「読解力」を付ける研修にシフトチェンジをしました。加えて、今年から全学年での算数科少人数指導を実践しています。少人数指導に取り組む中で、再度「学び」について意識するチャンスをもらった気がしています。習熟度別でしっかりと子どもたちに必要な力を付ける。同時に、授業では学び合いの授業をベースに行おうと。研修会ごとに先生方とも確認しながら、この二本立てで進めています。

今日授業をされていた算数教室も楽しく学べる工夫がいろいろされていますね。

中村: そうですね。雰囲気づくりも大切かなと思います。中学の数学の教科書なども置いたりして。
今の6年生の算数の教科書を見ると分かるのですが、目次に中学1年のこの単元につながります、と書かれています。中学校の数学の教科書をちょっと見たら、かなりの部分でつながっていますね。逆に小学校で解くような練習問題のレベルも中学1年の教科書には載っています。その辺りも感じてほしいな、という願いはあります。置いてあると休み時間に見たりする子もいます。

 本時の比例の授業もそうでしたが、この単元とこの単元は繋がっている、ということも感じてほしいですね。比例の勉強には、比の考え方が入ってきたりしますよね。この前は速さの単元でしたが、速さにも比例の考えを応用できます。「速さ」を求めるとき、公式を覚えて解くだけでなく比例の関係から考えてもいいと思っています。小学校で学ぶ掛け算、割り算は、ほぼ比例や比が関係しています。いろんなやり方で解いていくといいかなと。

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