CHAPTER 2 民間からの視点 〜学校の地域情報センター化〜
各々の先生方の役割が明確に分担されているんですね。非常にシステマチックな運営の仕方であるかことが先生のお話で理解できました。
3つの部門の中で、「外部連携部」というのはつつじが丘小学校を大きく特色づけるものになっているかと思います。学校図書館をベースにして地域情報センターという組織を運営されていると聞いています。その考え方および仕組みをお話いただけますか。
本校に来て5年目が終わろうとしていますが(6年目に入ったところですが)、1年目からのテーマとして、外部から私が着任したことで、何が保護者や子どもたちにとってメリットになるかということをいつも考えてきました。今までずっとプロパーとしてやってこられた先生方に比べて、それ以外の世界でいろいろ仕事をしてきています。そうしたことを私の持ち味として学校運営に活かしたいと思いました。一人一人の先生方は、大変優秀ですし、責任感を持ってやっている方が殆どですが、それぞれの先生が持っている力量とか限界が、子どもに対する授業や提供する教育内容の限界になることに非常に抵抗感がありました。たとえば1組、2組、3組ということによっても保護者に『当りだ、外れだ』という評価を受けてしまう。それをどう打開するかという一つの手法としては〔たとえばそれをある程度共通化する時のやり方としては〕「教材」を活用するという考え方もあると思います。それといっしょで、極力いろいろな学校外のリソースを持ち込むことによって、それを活用して教育活動がされれば、1組、2組、3組もほぼ同じように質的な共通性が担保できるだろうというのがもともとの発想でした。
そうした中で、1年目に面白い企画が本市教育委員会で立ち上がったんです。それは何かというと、教員だけではなくて、横浜市役所、主に教育委員会事務局が中心なのですが、市の職員と教員を対象とした若手職員による「問題解決プロジェクト」というものです。確か、1年目は6つのテーマが分かれていました。たとえば、小学校でいうと『給食の残渣を0にするためにはどうすればいいか』というような。その中の一つに『学校図書館の地域情報センター化を考える』というプロジェクトがありました。学校図書館の地域情報センター化というと学校図書館の方にウエイトがあるように思えますが、私たちの解釈というのは逆で、学校図書館の地域情報センター化というのは学校の中に地域情報センターの機能をどこに一番作りやすいかといったら学校図書館だったみたいな順番なんです。地域情報センターというのは、いろいろな情報と同時に、人の行き来、出入りがあるような「場」を学校の中にどうやって作るか、という解釈をしました。本来でしたら、そのプロジェクトは、いろいろな所から職員が集まってくるもので、管理職はメンバーとして想定されていなかったようでしたが、教育委員会に連絡させていただいて、地域情報センターとか学校図書館という以上、手法の問題だけではなく、「場」に関するものだからできれば会場を本校にして、本校の若手の職員をそこに入れて、外部の職員の方にも来ていただく中でのプロジェクトとして進めさせて欲しいという交渉をして認められました。それが本校の地域情報センター化のスタートです。1年目は本校の教員5人に、教育委員会事務局や市立図書館の若手職員5人でスタートしました。私は当初アドバイザリースタッフというかたちで加えてもらいました。結局毎回ミーティングに出ていましたが。それがもとになって2年目に「パイオニア・スクール・よこはま(PSY)」の指定を受けて4年間進めてきました。
何のためにそれを作らなければならなかったかというと、一つは先ほどお話したように先生の能力だけに依存しない教育内容の提供をというのが1つのテーマ。もう1つのテーマは、表現の仕方が難しいのですが、「学校の社会化」だと思っています。親御さんは社会で生きていらっしゃって、特にこの地域の方々は会社員の方が多く、まさしくビジネスの世界で生きてられる。そのお子さんを預かっている学校で、残念ながら学校という場は閉鎖的なところもあり、学校外の社会の様子とか、社会の流れとどこか隔絶しているところがあります。それは決して職員の責任ではないし、学校の責任でもないと思います。というのは、それが今までの流れというか、学校は教育の場だからそれでよいとしてきているところがあって、そんな中でも優秀な先生方が、自分から殻を破って外と連携していくという事例があったというのが実態だと思います。大切なのは、今自分たちの目の前の子どもをどう育てるかといった時に、社会との関連の中で捉えなければ、ブレていくと思うんですね。でも私が、言葉でそれをいくら言っても、もしくは偉いスペシャリストの方に講演いただいても、その時は理解してもおそらく定着はしないことだと思います。一番早いのは、いろんな方々に学校に来ていただける「場」をつくっていく。学校という場をより公的な場として、社会と近づける。かかわる人を増やし、学校や教育に対する理解者、協力者、参画者を増やすこと。それにより学校すなわち教職員も社会との関係を意識し、理解していく。そんな流れをイメージしてきました。その呼び水としてのプラットホームを作りたいというのが2つ目の理由なんです。この4年間で様々な外部の方と連携ができました。地域というのは狭義の意味で学区内と捉える必要はないですし、青葉区でも、横浜市でも、日本でもいいと思います。とにかく、学校外の方々が入ってきやすくなるような「場」は確実にできてきていると思います。やってみるとわかるのは、それを通して先生方も変わったなぁ、ということ。先ほどもお話ししたように本校の重点研究が「総合的な学習」であり、「横浜の時間」です。これをやっていく時に、サブテーマが地域連携、外部連携なんです。要は、スポットでも出前授業はいくらでもできるんですが、それをスポットにしないで、年間計画の中に巧くプロットしていけば、子どもたちの学習というものがどれだけ深まっていくのか、また、保護者からどれだけ信頼を得ることができるか、それを重点研究と裏表で両面やったから職員の中にも落ちてきたという印象はあります。
そして、サポーターグループがいくつも立ち上がりました。学校図書館なんかはまさしくビフォーアフターの世界で、これ(地域情報センター)が始まる前の学校図書館は、非常に暗くて、あまり入りたくないような感じでしたが、市立図書館の司書の方からアドバイスをもらったり、保護者や地域のサポーターの方々に入っていただき、館内に装飾をしていただいたり、本を綺麗にしていただいたり、学校としてもそこに予算を計上して備品を揃えたりしました。そして、見違えるように図書館は変わりました。また、本校の特徴でもあるワールドサポーター。海外駐在をして帰国された保護者の方々は非常にバランスがとれていて素晴らしい方が多いと思っています。海外日本人学校、海外の現地校、インターナショナルスクールのいずれでも学校に任せっきりにするということはあり得ないんです。保護者が一緒になって学校を作っていかなければいけない。それは非常にコミュニティスクールに近いといえます。日本人社会にとってその学校が必要だから日本人学校ができ、また現地の学校に入った以上は子どもだけでなく親もいっしょにいろいろなボランティアを経験します。そして、3年、5年と過ごされて帰国する。いろいろな経験を積まれた保護者の方が多くて、その方々こそ貴重なリソースだと思い、サポーターグループを立ち上げていただきました。ワールドサポーターの方々には、世界各国の情報を、子どもたちにわかりやすくお話いただいたり、学校図書館や校内に巧く展示していただいています。お陰で、教職員だけでは決して作ることのできない貴重な環境やイベントが沢山できました。そして、他にも、いろいろなサポーターグループが立ち上がってきました。 |