「アイテム」トップ > 活用校の声 > 日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2011 > 日本教育新聞 2011/01/17付 連動企画vol.3

日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2011

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 日本教育新聞企画特集・連動取材vol.3では、大阪府豊中市立新田南小学校(園田博校長)を取材。同校の6年1組の授業取材と同校の算数指導についてインタビューをさせていただいております。授業は、6年担当速水由三子先生による「帯分数×帯分数」を。6年1組の子どもたちは、「縦1と2/5m、横2と1/3mの面積は何㎡?」という難問題に挑みます。果たして… Part1、速水先生への授業前のインタビュは、日本教育新聞企画特集『子どもの「~たい」を引き出す課題の提示を』と併読ください。
 また、Part2として、同校の算数指導のあり方、「アイテム」活用方法について、学校長である園田博先生、室井由美教頭先生、5年担当の直海知子先生にお話いただいております。

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同校学校長である園田博先生

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室井由美教頭先生

『授業の中でも「したい」「やりたい」というような「~たい」をどのようにいっぱいいれるかという視点が大切なんです』と校長先生。Part2では、同校の指導方針について言及いただいております。

Part1: 授業者、速水先生へのインタビュー
ノートに考え方をまとめていく

NPO次世代 加藤

 今日の拝見する6年のお授業についてですが、「ここは絶対抑えたい」っていう部分、見所をお聞かせいただけますでしょうか?

速水先生

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 見所ですか…ないかも(笑)
 実は、今日の授業は、教科書に載っていない部分なんです。「帯分数×帯分数」というのは教科書では触れていません。しかし、これは分数の計算をしていく上で絶対出会うであろう問題であるなと判断しました。「アイテム」では、単元の中で1項目「分数の掛け算2」(「アイテム」6年8p~11p「分数のかけ算2」PDF[*新学習指導要領より学習内容として入ります。])として取り上げられており、これをまずやらない限りは分数の掛け算ができたとはやはり言えないなということで、今日は敢えて、この授業をさせていただきます。
 今日の授業では、基本的には、仮分数で解こうというのと、それから整数部分と分数部分で分けて解いたらというのと、子どもたちの考え方が2種類出てくるだろうと私はふんでいるんです。もし、取材に来られてなかったら、私は最初から「各々どうするか考えて発表してごらん」としようとすると思うんです。ただ、取材があることで子どもたちも幾分緊張していると思います。子どもたちに口頭で「~だといいと思う」と言わせて、仮分数と帯分数という考えを出したら、敢えて私が前で解いてみようと。そうすると反応が返ってくるじゃなかと。それで、「どちらが正しいの?」っていうのを子どもたちが図とかを利用して解明するという…そこのところで子どもたちがいったいどのような図を持ってきて、どうやってどちらが正しいのかを証明をするかですね。それで、もしみんながお手上げだったら、こちらがヒントとして図を描いてあげようかなとは思っています。面積の図を描ければ一目瞭然なんですが、子どもがそれに気づくかどうかですね。そういう分数の入った、整数部分と真分数部分が混ざった面積図をうまく描けるかどうかっていうのはちょっと自信がないので、子どもがお手上げになったら私が「こんな図になるよね?」って描いて、子どもたちが考えたものとをすり合わせるような形で引っ張っていかないといけないかなと思っています。それで最後の結論としては、やはり「仮分数だと間違いなく計算できる」というふうに子どもがまとめてくれるとありがたいかなと。それでうまくいかないようなら私が「どれがいい?」と引っ張ります(笑)

日本教育新聞 西山氏

 今回の指導案にも書いていただいたのですが、いつもの授業の中で、子ども同士で意見を言い合ったりだとか、グループで活動したりだとかっていう場面は多いんですか?

速水先生

そうですね。主にそういうパターンです。本校では、算数教育研究に取り組んでから、教師が「この問題の解き方はこうだよ」というのではなく、子どもたち自身でどのようなことになっているのかを考えて解いていくという研究をずっと続けています。子どもたちも、ずっとその流れで算数教育を受けていて、そういうものだと思っているので、「自分の考えを書いてごらん」と言うとみんなとりあえずノートに書き出しますね。

日本教育新聞 西山氏

 「ノートの取り方」を意識してのご指導ということですが、具体的にいうとどのようなご指導をされているのでしょうか?

速水先生

 自分の考えが分かるようにするということですね。間違った考えがあったとしても消しゴムで消すなと。その下に新しい考えを書きなさいと。そうは言っても消してしまう子もいるんですが(笑) 特に算数において強調して言っているのは、図とか式とか、線分図とかを使って考えを表せるようなノートにしなさいというふうには言っています。ですから、図を描いてその横に言葉で説明するというような形で、自分の考えが後で振り返ってノートを見たときに分かるようにということですね。今日も宿題に出したページがあって、1時間目に子どもたちがやった宿題にザッと目を通したんですが、間違ったところがあったら間違った理由を「ここは~する」というように言葉で解説を入れている子なんかもいるんです。やはりそういう子のものはみんなに紹介してあげて、「ただのバツではなくて何で間違ったのかとか、どう考えたらいいのかという考え方を書いてあるから、こういうノートは良いよね」っていうような指導はしています。

「アイテム」の使い方

NPO次世代 加藤

 「アイテム」についてですが、子どもたちの反応はどうでしょうか?

速水先生

 実は昨日、私のクラスの子どもたちにインタビューをしたんです。「アイテム」を作った方々が来られるから、ちょっと本音のとこ言うてや!」と。(笑) で、「アイテムのいいとこどこ?」って聞きましたら、「一つのところにドリルもあるけども、いろんな文章問題もあって、一冊で全部の復習ができる。」という声が多かったんです。すごくそういう意味では勉強しやすいと。それから、「教科書以上の発展の問題が出ているから、すごく考えられていて面白い。」ということも言っていました。あと、答え合わせの解説についてですが、「他のドリルとの違いは何なの?」と聞いたら、普通のドリルだったら答えしか載っていないけども、「アイテム」は解き方、考え方の解説が非常にわかりやすく書いてあって、これを見て「そうか!」ってわかるとも言っていました。

NPO次世代 加藤

 活用状況については?

速水先生

 「活用する力をつけよう」は、宿題として出す場合が多いです。「チャレンジしよう」のところは、やりたい子がやるというパターンですね。(本校では、)そういう使い方をされている先生方が多いんです。これ(「チャレンジしよう」)を宿題にしてしまうと、すごく苦しむ子が出てくるので、「やりたい子はやっといで」という風にしたり、内容によっては、みんな行けそうかなと思ったら全員で取り組んで、後の答え合わせの時に「こん中で難しい問題なかった?」と、次の日に子どもたちと一緒に考えることもやっています。正直に言いますと、去年までは一冊やりきれなかったんです。ひどいと7割。100%埋めるということはちょっと不可能でした。

NPO次世代 加藤

 この教材は、全ての子どもたちが100%埋めるっていう想定のものではないんです。教科書レベルの基礎・基本を定着させる問題だけでも多いですよね。残りの半分は子どもたちの習熟状況に対応して活用いただければ良いと考えています。クラスの中には、「チャレンジしよう」なんかをすごくやりたがる子も何人かはいますよね。そういう子どもたちの意欲にも対応しなければと。「伸び止め」は、良くないと考えてのことです。
 一点、企画の時に私たちが心配したのは、「やり残し」があることを前提にする問題集というのはご父母の方々とってどうなのだろう、ということです。そのあたりのご父母の方々から、ご意見はございますか?

速水先生

 これを実際やっていて、保護者のほうから「他のドリルに変えてくれ」っていうようなことは一切ないです。逆に、子どもから『お母さんが「ここやらへんの?」ってゆうてた』みたいな声がありました。やはり、親としては、訓練よりも「考える力」をつけさせたいって思っている方が多いので、これはすごく歓迎されていると思います。「個々の子どもに合った…」というのは今初めてお聞きして。そういう風に受け取ったら、空いてるページも気にならないなぁと(笑)
 あ、それで子どもからの苦情いいですか?

速水先生

 1年生にとっては、ちょっと大きいんです。それから、開きにくいと言っています。やっている途中で閉じてしまうと。そうすると、どこをやっているかわからなくなったみたいな。真ん中あたりのページをやった時に、書き込みが非常にやりにくいと。

*開きにくいという点に関しては、2010年度版より、各学年の「アイテム」の表表紙と裏表紙に折りを入れました。事前に折にそって折っておいていただければ、いくらか安定するかと思います。大きさについては、問題数確保と書き込みスペースの関係で、サイズをおとすのは難しいというのが現状です。

日本教育新聞 西山氏

 基本的にはアイテムに直接書き込んでいく形ですか?

速水先生

 私のクラスでは自分で必ずマル付けして、間違え直しまでが自分の学習だよという形でやらせてます。「アイテム」を使っている他クラスの先生も大概そうされているんですが、計算ドリルのほうは別にドリル用のノートを作って、そのノートに書き込ませています。

日本教育新聞 西山氏

 基本的には、「活用する力をつけよう」までは自分で進めていくということですよね。

速水先生

 そうですね、宿題として。こちらで、子どもが自分でマル付けしているのを全部見ます。そうすると、間違いがすごく多い問題だとかが見えてきます。それで、どの子も間違っているなあという問題はみんなで押さえなおしたりしています。

日本教育新聞 西山氏

 どういった傾向の問題が間違えやすいとか、苦手だとかいうのはありますか?

速水先生

 当たり前なんですが、教科書に載っていない系統の問題が「アイテム」に載っているんです。「速さ」の単元なんですけど、分数で速さを表すというというのは、実は教科書には一切ないんです。20分を「60分の20」の「3分の1」で表す、それで計算をするというようなことが全く教科書にはなくて、こちらもそういう取り扱いがあるということをすっかり忘れてやってしまったことがあったんです。考え方としては、私もすごく良いと思います。時間を「小数」で表すよりははるかに効率的なやり方だと思うんです。ただ、教科書の中に全く触れてもいない考え方の問題がここの中にある時は、やはり子どもたちは総崩れに…。私も全ての問題に目を通しているわけではないので。子どもたちがえらい間違えているなあと思ったら、まあそういう問題だったと。で、おかしいなと思って、子どもたちのノートを見ていくと、ある子はマルをつけていたりして。それで聞くんですよ「答え見てやったでしょ」って(笑) 

日本教育新聞 西山氏

 速水先生としてはその教科書に出ていない問題までも理解してほしいという思いはありますか?

速水先生

 内容にもよりますが、「アイテム」の中のものをプラスでやるとなると、とても時間数が足りませんので、その辺は学年で相談してやっていく必要がありますね。 

 有り難うございました。
それでは、6年1組の「帯分数×帯分数」のお授業を拝見させていただきます。よろしくお願いします。

Part2: 5年担当、直海先生へのインタビュー
「アイテム」の進め方

NPO次世代 加藤

 アイテムを4年間お使いいただいてありがとうございます。直海先生が「アイテム」算数の採択のきっかけを作られたと聞いております。導入にいたる経緯をお聞かせいただければと思います。

直海先生

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 以前、(筑波大学附属小学校の)算数研究会に出席させていただいて、算数部の先生方が、算数の授業を楽しんでおられ、子どもたちもすごく楽しんで難しい問題に挑んでいるところに感銘を受けました。その際、「アイテム」に出会ったのですが、(筑波の)先生方の算数に関する遊び心がいっぱい載っており、ただの繰り返しの計算ドリルとは違うなと思いました。それで、是非この面白さを子どもたちに味わって欲しいと導入を考えました。
 最初は、5年生での導入を検討しました。普通のドリルとは全く違います。当初は、先生たちの間で「どうかな・・・」という声もあったんです。でも、計算ドリルが下にあって、上の部分はオマケでついていると思えばすごくお得な感じで、「そうか!」ということで採択となりました。 使い始めて、子どもたちから「難しそうだけど、面白そう。やったら解けた。」という声も返ってきました。家でも、やっていないところを家族と一緒に考えるという状況も生まれ、お家の方からも反応が良かったんです。2冊目を家庭用に欲しいというような方もいらっしゃいました。こうした状況の中で、算数の発展的な問題に触れる機会もあるんだなと思いました。

日本教育新聞 西山氏

 「アイテム」だと、子どもたちから「難しいからこれ教えて」と、お家の方に聞くという状況もあると?

直海先生

 難しい問題については、そんな感じでしょうか。それから、「スペシャルアイテム」や「授業でわかる!」とかは、家でやっていいよと伝えています。余力がある子どもたちが、「これは面白い問題だ。家で(みんなに)出してみよう!」ということで繋がりができます。そこでは、計算ドリルでは絶対に出てこないであろう子どもの様子であったり、発言だったりが聞けて、よかったという感じですね。

NPO次世代 加藤

 「アイテム」には、各単元に4つのステップがありますが、その位置づけはどうされていますか?

直海先生

 「確かなものにしよう」は授業で全員必ずやっています。「活用する力をつけよう」は授業でやったり、場合によっては宿題にしたりしています。「チャレンジしよう」は、やる時間がなかったりするんですが、「先生ここやっていい?」と聞いてくる子どもも何人かいて、後で「この問題できたー!」って持ってきたりします。子どもたちが「このページは自分たちでやっていいんだ」ってなると、できる子はどんどん進めているという状況です。

日本教育新聞 西山氏

 何割くらいのお子さんが「チャレンジしよう」までいきますか?

直海先生

 私のクラスの中では、約8割の子どもが全ての問題に触れるようにしていますね。単元内では無理な場合も、3学期には、1年間の復習を「アイテム」で行います。やはり、子どもたちも「全部やってしまいたい!」「1冊やり遂げたい!」という気持ちもあります。時間が余った時、1ページずつチェックしながら「ここはOK!それじゃ、ここやってないからやってみよう」という感じになりますね。
 ただ、先生によっては「やりきれない」とか、「どうやってこれをやって(指導して)いいのか分からない」とか・・・若手の先生の中では、そういう声もあるようです。逆に、ベテランの先生はもっと丁寧に見ておられて、「チャレンジしよう」は全員の子どもたちに理解してほしいという意識の高い先生もいらっしゃって、本当に「アイテム」に時間を費やしておられます。

日本教育新聞 西山氏

 クラスによっても使い方が違うということですね。

直海先生

 そうですね。ただ、学年ではなるべく合わせるようにはしています。3年、4年は学年全体導入なので。

「課題解決型授業」について

NPO次世代 加藤

 学校での研究のテーマ『課題解決型授業』とリンクするような部分もあるのでしょうか?

直海先生

 そうですね。答えを求めて終わりではなくて、「なぜなのか?」を重視しています。読み込むことが必要とされる問題を解いていく力をつけるように指導しています。特に、3,4年生では少人数による課題解決型に力を入れています。それで、担当の先生方が言うには(「アイテム」)を、みんなサクサクやっている、と。
 数字だけを抜き取って式をたてて答えが出るような問題ではなくて、重要な単元であるとかは、しっかり読まないと解けません。また、解いても「どうしてその式になるのか」を説明しないといけない。ですから、課題は別のところにあるといったらいいんでしょうか。そういった考えないといけないような問題を意識的に提示しています。

NPO次世代 加藤

 (速水先生の)授業を拝見して、解法に至るまでの道筋を、とても大切にされて指導されているという印象を受けました。これは算数に限ったことではいと思います。その点については校長先生のお考えはいかがでしょうか?

園田校長先生

 いろんな研究授業を行うにしても、子どもたちにとってこの課題が本当に良かったんだろうかというところを大事にして話し合いをしているつもりです。若い先生方も、課題提示の仕方については、相当工夫しています。

日本教育新聞 西山氏

 速水先生のお話の中で、図を書いて説明したりするようなことを習慣付けているとお聴きしました。直海先生もそういった意識で取り組まれているのですか?

直海先生

 そうですね。〝図〟と〝式〟と〝言葉〟の三点セットです。最初は、子どもたちにも戸惑いがあるので、まず、子どもを前に出して、「考えを黒板に書いてください。」と促します。それがもし図だったら「この図を説明しましょう。」と。そして、説明できたら「この図を式に表しましょう。」と。発表した子どもたちに常々聞くようにしています。また、発表者に聞くこともあれば、図だけでそれを見ている子どもたちに予測させて式に繋げたり、言葉でクラスのみんなに伝えさせたりということは毎時間意識してやっています。

日本教育新聞 西山氏

 ノートの取り方の工夫は何かされていますか?

直海先生

 そうですね。5年生くらいになると自分でまとめてとるようになるんですが、3年生、4年生は一定の時間をかけて、「この中で自分の考えに一番近いものを写しなさい。」とか「この考えが一番良いなと思ったものを写しなさい。」とかいうことを、子どもたちに声がけをするようにしています。

日本教育新聞 西山氏

 そういった指導の結果が、ちょっと難しい問題を解くにあたって反映されたりはしますか?

直海先生

 しっかり筋道をたてて書いている子のノートをコピーして配ります。「どこが分かりやすい?」「どこが良い?」とか、「こういう風に書けば分かり易いんだ。」と、頭では分かっていても、ノートに説明として書けなかった子どもたちに向けてのヒントとして提示しています。

日本教育新聞 西山氏

 話は変わるのですが、低学年用の教材は別途ご用意されているのでしょうか?つまり、「アイテム」に繋げるまでの部分をどのようにおやりになっているのかをお聞きしたいのですが。

直海先生

 当然の事ながら(教材の選定は)その年に低学年を担当される先生方の判断によります。今の2年生の先生方は、教科書の補助として計算ドリルとプリントを使っています。ただ、書き込んで終わりなので、3年生で少人数指導となって先生方が一番戸惑うのはそこなんですね。低学年からガラリと変わるので。

日本教育新聞 西山氏

 そのあたり、中学年の子どもたちに対して、どのように意識付けをされておられますか?

直海先生

 最初、子どもたちはすごく戸惑いますよね。答えを出して終わりではないということに驚きます。「答えを出したのに先生は「なんで?」とか「どうして?」と聞いてくると。終いには「いじわるされている」とか。(笑)  ひっかけているつもりはないですが、「先生またひっかけ問題出して!」とか「またいじわる問題出して!」というように、子どもたちは、喜んでいるような、揺さぶられていることを楽しんでいるような感じになっています。3年生を受け持ったとき、そう感じました。

日本教育新聞 西山氏

 今日の授業でもそういった場面がありましたよね。

園田校長先生

 まあ、子どもたちは直海先生がそういう意味において「いじわるな先生」ということを良く知っています。(笑) 「直海先生はすごいいじわるや!」というような表現をしていますが、子どもたちの答えに対して大阪でいうところの「ツッコミ」をいれるということを繰り返し、繰り返しやっていると、子どもたちは自然と「これを言ったら先生はどう返してくるやろうか?」と、一歩先を読んでより考えるようになるんです。

日本教育新聞 西山氏

 先に聞いておくべきだったのですが、3年生から始まる少人数指導は習熟度別で振り分けているのですか?

直海先生

 単元によって変えてはいますが、子どもの進み具合で分けたり、場合によっては一斉にしたりしています。

日本教育新聞 西山氏

 具体的にはどのような単元で少人数指導をとっていますか?

直海先生

 やはり計算で、最初の「計算の仕方」の部分は一斉にやります。その後の繰り返し学習の部分になると、クラスを二つに分けて手厚く見れるようにとか、進める子は進めるようにとかというようにしています。

「~たい」が沢山でてくる授業を

NPO次世代 加藤

 過去に筑波大付属小の田中博史先生を招いて授業をしていただいたという話をお聞きしました。先ほど、その進め方に感銘を受けたというお話をいただきましたが、実際に授業をご覧になった感想はいかがでしたでしょうか?

直海先生

 田中先生には確か二回授業をしていただいたと思うのですが、いろいろな考え方が出てきて一つに集約されて新しいものが生まれるという授業展開ですよね。その面白さであったり、遊び心であったりというアイデアは、拝見している私たちにとって、とても興味深いものがあります。子どもたちは本当に食いついていくんですね。中身はとても難しいんですが、子どもたちはいろいろなことを言っているうちに、そこからいろんなものが見えてくるようです。その辺が「アイテム」でいうところの「スペシャルアイテム」であったり、各問題にも詰まっているなというのは感じますね。こだわりというのでしょうか。「この問題は細水先生らしいな。」とか「山本先生らしいな。」とかっていうのは見受けられますね。

園田校長先生

 実は、前々から明日の府算研に向けて直海先生の研究授業の指導案を検討しているところなんです。これには、室井教頭に主に関わっていただいているんですが、授業の中でも「したい」「やりたい」というような「~たい」をどのようにいっぱいいれるかという視点で、室井教頭先生と直海先生が話をしていたのは、やはり正木先生からお教えをいただいた成果かなと考えています。

*正木孝昌先生:筑波大学附属小学校教諭を経て、國學院大學栃木短期大学教授。文部科学省認定教科書「学校図書版小学校算数」編集委員

日本教育新聞 西山氏

 「~たい」をたくさん作るために先生のほうで工夫されていること、意識されていることはありますか?

直海先生

 「~たい」を作るというのは本当に難しいですよねぇ(笑) こちらが説明してしまえば1分で終わるようなことを子どもから引き出す。それは子どもが今まで習った既習事項であったり、子どもの経験であったりするのですが、引き出すための課題設定は本当に難しいなと。

室井教頭先生

 気をつけなきゃいけないなと思うのは、それがイベント的であってはいけないということですね。やはり教材の流れ、単元の流れの中で活きたものを作らなければならないというのは常々思っています。しかし、若い先生方は、クイズ形式で単元とは何も繋がらないようなものになってしまう傾向があります。それは気をつけなければいけないなと。田中先生や正木先生の授業を見ていると、「この単元では、ここを押さえなきゃいけない。」「これに対しては、こういうアイデアが必要だ。」というのがあって、それを聞くと「なるほど!」と。でも、それを考えるのはなかなか難しいんですけどね。

直海先生

 ただ、考えているのは楽しいですね。「ここで子どもはこう言うやろなぁ」とか、「ここでこうすると子どもはビックリするやろなぁ」とか・・・。

NPO次世代 加藤

 たまにそれが外れるんですよね(笑)

直海先生

 そうなんです(笑) 数字だけ走っていて根本が分かっていなかったとか。ただ、そういうことがないと、分かっていたつもりでどんどん先に進んでいたんだろうなぁということがありました。
 府算研で「割合」の授業をするんですね。それで5年生で「割合」というと、「さぁ、割合するぞ!」と構える部分ってありますよね。でもよくよく考えてみたら、「半分」という言葉は「割合」ですね。「半分」ということは分数だったら「2分の1」。小数に直したら「0.5」。「0.5」というとすごく「割合的」なんです。「半分」だったら低学年でも言うけれど、「0.5」だったら割合的。それを糸口に「割合」に持っていったらなと思って授業を練っています。
 まず、4リットルマスの半分に水を加えたものと、2リットルマスの半分に水を加えたものを子どもの前に提示します。それで子どもたちに「どれだけ水が入ってますか?」と聞くと、子どもたちは「半分」と答えます。それで『「半分」ということは「2分の1」だから、「0.5」だよね』となり、どちらにも「0.5リットル」と書いたんです。そうしたら『お互い量が違うんだから「0.5リットル」はおかしい!』と子どもたち言うんです。『え?でも今あなたたち「0.5」と言ったじゃない』というところで、では『最初に言っていた「0.5」というのは一体何を意味するのか』というような流れにしたんですね。どんな意見が出るにしても、『いやいや、「0.5」というのは「1」の半分なんだ!そこにあるのは2リットルマスなんだから「0.5」じゃない!』となってしまって・・・ だから2リットルマスや4リットルマスを割合として「1」と見るという考え方が子どもたちからも出てきていたし、そのように説明もしたのですが、「いや、それはおかしい!「0.5」じゃおかしい!」と、もう収拾がつかなくなってしまいました(笑)

室井教頭先生

 挙句の果てには先生から「あれはウソやった。忘れて。」と(笑)

直海先生

 『「0.5」と私は言っていない』とか、『「半分」は「半分」だけど「0.5」じゃないねん』とか(笑) そういったことを気がつかないまま、「割合」で子どもたちが「18÷36」を「0.5」と出したりしているのは、「ホントに分かっているんやろうか」と不安になりましたよね。

日本教育新聞 西山氏

 既習事項の復習、活用の仕方を意識しておやりになっているということですよね。

直海先生

 そうですね。やはり既習事項から積み上げていかないと、新しいことは学習できないと思うんですね。ですから、新しいことでも既習の力でなんとか、まずやってみる。その上で、できるんだけどももっと簡単にとか、もっと便利に、こんな新しい言葉、新しい計算方法があるんだよっていうような感じで。

NPO次世代 加藤

 最後に、「アイテム」に対してご要望があればお伝えください。

園田校長先生

 算数についても、国語についても課題的学習をしているんだということを、昨年もPTA総会でもお話しました。「アイテム」も含め保護者の方々には一定の理解をいただいていると思っています。

 本日は、ご多忙の中お時間をいただき誠に有り難うございました。

【あとがき】

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府教研のご準備等で多忙を極める状況の中で貴重なお時間を頂戴しました。今回の授業取材およびインタビューに快くご対応いただきました園田校長先生をはじめ各先生方に、スタッフ一同心より御礼申し上げます。また、6年1組の児童の皆さんには、元気をいただいたことに感謝しております。授業取材の最後に『「アイテム」作ってくれてありがとう!』の一斉挨拶は、この企画の一端に携わる者として、大きな励みとなりました。本当にありがとうございました。

NPO 次世代教育推進機構 スタッフ一同 

*本記事は、学校様のご了解をいただいた上で掲載いたしております。外部転載等につきましては固くお断り申し上げます。

資料

「アイテム」算数6年に掲載の「帯分数×帯分数」の授業です。
『教科書になくとも、分数の理解には大切』と、速水先生。

資料

「アイテム」算数6年に掲載の「帯分数×帯分数」の授業です。
子どもたちから、2通りの計算方法がでました。でも、答えが違うことでクラスの中に動揺が… 果たしてどちらが正しいのか。
(画像クリックで拡大)

資料

子どもたちは、この問題を解決するためにノートに面積図を書きながら考え始めました。クラスの中に緊張感が…

資料

子どもたちの試行錯誤が続きます。中には、手の止まってしまう子どももでてきました。【6年1組、頑張れ!】

資料

『どんな図を書けばいいか困っている子がいたら、皆でノートを見せ合って!』と速水先生。後ろから校長先生も興味津々。

資料

「縦は『1』を5つに分けて、横は『1』を3つに分けて…」
何人かが糸口を見つけたようです。【ここまできたら、後一息!】

資料

ひとりの児童の面積図による説明が、書画カメラで。クラスの中に感嘆の声が上がりました。
(画像クリックで拡大)

資料

『なぜ、そうなるのかクラスの中で徹底的に考えさせることが大切なんです』と、速水先生。

資料

最後は、「アイテム」算数で、授業のおさらいを。6年1組の皆さん、お疲れさまでした!

パンフレット「アイテム算数のご案内」

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