「アイテム」トップ > 活用校の声 > 日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2013 > 日本教育新聞 2014/01/28付 連動企画vol.1

日本教育新聞「アイテム」企画特集連動取材 2013

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 日本教育新聞・企画特集(1月28日号)にて、神奈川県・横須賀市明浜小学校様に取材協力をいただきました。学校長・小田部忠仁先生からは、学校経営や教育指導について、4年担当 池田文子先生、2年担当 羽田智美先生からは児童に寄り添う算数指導の方法、ポイントについてお話をいただきました。これからの先生方に是非お読みいただきたいインタビューです。

子どもに寄り添うことで伸びる学習意欲 1
学校・保護者・地域が、一体になって学習環境をととのえる
<学校長編>

小田部学校長に伺います。
貴校の簡単な学校紹介をお願いします。

小田校長

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学校長 小田部忠仁先生

 本校の在籍児童数は837名、ひと学年4クラス、特別支援学級が2クラスです。市内47校の中で2番目に大きな小学校ですね。本校には、言語難聴教育の通級学級「ことばの教室」がありまして、現在42名のお子さんを受け入れています。開校53年目、 まだ比較的新しい学校ということになりますね。

 地域性としては京急久里浜駅の商店街も学区にはなっているのですが、周辺部にはマンションが多いですね。横須賀は今、基幹産業であった工場が次々に撤退していることもあり、行政としても厳しい状況です。保護者の方も横浜や市外にお勤めで、共働きという家庭が多いようですね。以前は、新しく入学するお子さんを持つ家庭の保護者の方が、学校というもののシステムを理解するのに時間がかかり、「どうして保護者がこういうことをしなくてはいけないのか」「そういうことがどこに説明されているのか」「学校側の説明不足ではないのか」などの声が寄せられたこともあったようです。また児童数が多いだけに、子ども同士のトラブルなどの対応が大変だったと伺っています。

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 そのような状況下で2年前に校長として赴任してきました。本校は新任や若い先生が多く、活気に満ちた学校です。学校として、保護者の目線に立って、保護者の方が分からないことは相談に乗りながら、一緒に子どもの事を考えてやっていきましょう、という姿勢で取り組んでいます。学校側から一方的にお願いするのではなくて、同じ目線で考えることでお互いの壁を取り払えば共通理解が得られるのではないか、ということです。遅い時間まで保護者のお話を聞くこともありますが、何度か繰り返していくうちに歩み寄れるようになりますね。その効果は学力状況調査にも表れてきています。ここ2年で市の平均を上回る結果が出てきました。学習する環境が安定して整った中で学習すれば、学力は向上するということなのでしょうね。

貴校では、家庭学習についてどのような取り組みをされていますか?

小田校長

 いま4年生は、算数でアイテムを使っていますが、授業中も放課後の時間なども、子どもたちは一所懸命学習しています。(宿題を)やってこなかった子に対して、先生が「どうしてやってこなかったの」とは言わないんですね。その子はその子なりに理由があったんだろうと。放課後5分でも10分でもいいから一緒にやってみよう、先生はここにいるからやってごらん、という投げかけの中でその子の出来る範囲で取り組ませる。先生が工夫をしながら進めています。そういう具体的な目標をもって学習ができることは、素晴らしいなと思っています。今年は2年生もアイテムに取り組んでいます。習い事の中には、出来た子はどんどんプリントを進めていって、小学生でルートの問題を解いているような子がいて驚きます。「校長先生!ルートって知っていますか?」と聞かれて。小学校2年生でルートを知っていても、その意味まで理解しているわけではないんです。計算問題を解く方法は知っているのですが「どうしてこの答えになるか知ってるの?」と尋ねるとそれは分からないですね。そういう勉強方法とは違って、アイテムは段階を追って考え方、思考力を育てるものになっていますよね。ですから「どうしてこうなるの?」と尋ねると、その理由、どうしてこの答えが出てくるのかを説明できるんですね。そのような力を本校では育てていきたいと思っています。「考える力」は「人間力」に繋がりますからね。それぞれの学年に応じた「考える力」を身に付けさせたい、付けてほしいなという願いがあります。

新指導要領の導入による変化

現行の学習指導要領が導入されて、現場への影響はいかがですか?

小田校長

 厳しいですね。昨年一番授業時間を割いたのは「算数」でした。やはり指導に一番時間をつかいますね。年間余剰時間は最低でも20~30時間ほどあるのですが、その殆どを算数に充てています。横須賀市は有難いことに週2回、15時~16時半まで、主には教員経験のある方が放課後「学習サポートティーチャー」として教室に入ってくれます。そこへ希望者(子ども)が来て、勉強を教えて貰うというものです。その殆どが算数を聞きに来ています。事前に希望者を募ったところ100名近くになってしまったので、現在は小学6年生に限定して行っています。そこではひとり一人に合った課題を与えて下さって、丁寧に指導して貰っています。これは市の予算で市が行っているものですね。

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 4年生はサポートティーチャーからは外れてしまうのですが、その部分を池田先生を中心に担任の先生が行っています。算数はアイテムを使ってその子に応じた進度で、分からないところはフォローをしてまた子どもに返してあげて…という指導を行っています。保護者の方もフォロー体制が出来ているので、「宿題がないなら『アイテム』をやったら」と声掛けしてくださって。子どもも保護者も、安心して継続して使える環境になってきていますね。学校で購入するものについて、保護者の方は納得してくださっています。アイテムについても「こういう趣旨のものです」としっかり説明をすれば、理解してくださいます。3学期で分かれているものではありません。1年間で1冊なので、振り返りたいときに振り返れます。分からない問題があった時は、前に立ち戻れます、と。そういった説明をすれば、先生のやり方に安心して付いてきてくれますよね。そのような取り組みはこれから広がっていくと思いますよ。

意欲的な先生がたくさんいらっしゃるんですね。

小田校長

 本校は若い先生が本当に多いです。先日も職員会議の中で、児童にいいと思うことをやってみたいと提案がありました。ですが経験豊富な先生方の中には、先が読めてしまうので「やってみたところで結果はこうだよ」という意見が出るわけです。しかしそれを言ってしまうと「そうか、その程度の事なのか…」と若い先生は思って引き気味になってしまいます。でも、「本当にそうなのか、一部でもいいからやってみようよ。ダメだったらやめればいいし、もしよかったらもっと広げればいいじゃないか」と、ある先生が背中を押す言葉をいってくれるんです。「それなら頑張ってみます」という言葉が返ってきましたね。アイテムの取り組みも、去年は一学年でしたが今年は二学年に広がっていっています。今の4年生が来年5年になったら、5年になってもやりたいと言うでしょう

克服意識、達成感をもたせる

小田校長

 子どもたちに学習意欲や、達成感をもたせる、これはとても難しい課題です。
図工などでもそうですが、「ここに手を加えるともっといい作品になるよ」と言うと、子どもは「先生、僕はこれでいいんだよ(満足している)」と言います。子ども本人が満足していると言うと、親も含め先生もそれ以上は言いません。「本人がいいならいいや」と。理解の上で本人が納得しているなら、「それ以上のことは…」という雰囲気が現場でもありました。体育でもそうです。「走り方をもっとこうすれば速くなるよ」と言っても、その子に「僕これで一生懸命走っているからいいんです」といわれてしまう。

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放課後の教室風景

 克服意識、達成感というものを、今「学力向上」の中でもっと掘り下げていかなければいけないだろうと思います。そのためには、少しずつ小さな段階でもできたこと、辛いけど苦しいけど頑張って取り組んだ中でできた時の喜びを、子どもに与え、褒めて、次の困難に取り組ませていくという学習をさせたいですね。本校では「ひとりがひと工夫」と呼んでいますが、一時間(一授業)ひと工夫を心がけています。「なんでもいい。発問の仕方でもいいし板書の仕方でもなんでもいいです。一時間にひと工夫してみてください」と先生方に伝えています。そのことが、必ず子どもの学びの意欲に繋がっていくんですよ、ともね。800人以上児童のいる学校ですが非常に充実した毎日を過ごしていますよ。

「言語活動」の捉え方

学校教育の本質にも関わりますが、人間教育における社会で必要なチカラとはどのようなものと感じていらっしゃいますか?

小田校長

 コミュニケーション力ですね。文部科学省から出ている「言語活動」の重視は「文章表現力」や「発表能力」だとよく言われます。うまく文章を書く、話しをすると言っても、それ以前に「自分で考え、ひとつの結果を導き出すこと」ができないと、そこには至らないですよね。ですから、日々の小さな積み重ねを面倒くさがらないことだと思うんです。子どもに「できた時の気持ちはどうだった?」と掘り下げてあげると「あの時は楽しかった!」と返ってきます。「じゃ、またがんばってみよう」とこちらも声を掛けます。子どもは成功体験があれば、その時の感動や喜びを糧に新しいものにぶつかっていけます。

新学習指導要領では「言語活動」がキーワードとなっていますが、「言語活動を充実させなければ」と思って悩まれる先生も多いのではないですか?

小田校長

 「言語活動」をするには、まず習得が必要です。新しいことを習い、それを自分の力として獲得していくことが大事です。その場が学校なんですよね。昔、私が父に小学校の先生になると言いましたら、「子どもは、7歳になるまでまだ人の子ではなく神の子。1年生として入学して、1年間学校生活を送る中で、はじめて人の子として教え導いていくんだよ。教え諭すことが大事なんだよ。その立ち位置を忘れないように」と言ってくれました。高校生に教えるように、知識を授けようとすると、小学生は付いてはこないし育たないよ、と。その時すぐには意味がわかりませんでしたが、今の立場になると、理解出来る点が多々あります。教え導くという点からも、「習得」があっての「活用」であると思います。「言語活動」についても、その点が整理できていない先生がいるのかもしれませんね。

先生方には時間的拘束などもあり、教科学習や教材研究にあてる時間が不足しているとお感じではないですか?

小田校長

 その通りですね。横須賀市では「教員の職務状況の改善」という点から、文章作成や成績管理に校務支援システムを取り入れています。教員一人ひとりにノートPCを配備し、システム内での文書提出、成績管理や出欠、保健記録などを一元管理ができるようにしています。学年が上がれば自動的に前年度の履歴を使えるように。事務の省力化を進めてきていますね。ただ週休2日制の中で学習内容が増え、2年生から6時間授業が入ってきていますからね。先生方の授業以外の時間、実時間は少なくなっていますね。

授業面でも、授業数の不足や圧迫感、焦燥感がありますか?

小田校長

 圧迫感はあまりないですね。先生方が45分という時間帯をきちんと守っていけば、です。45分の中で、子どもたちに何を教え、身につけさせるべきなのか。どのような力をつけさせたいのか。その部分をはっきりさせて、授業内に想定される子どもの反応を予想し、描いて授業に臨む。予想と違っていた点を修正してまた次の時間に臨む。そのようにきちんと計画を立てて進めていけば、次の授業へのロスがないんですね。きちんと45分で終わり、5分休憩して次の45分へと進めば、子どもの中にもリズムができてきます。ただ、小学校の先生は全科目を自分が持っているので、前の科目を時間オーバーしてやることもあります。子どもは先生の言うとおりにやりますが、先生の都合で50分になったり2時間続けてやってしまうと、「45分」というリズムは崩れてしまいます。学習が途中で切れたり伸びたりする中で授業計画がずれ、かけ足になったり、間延びしたりもします。そのようなことがないように、授業設計をしっかりしておけば、先生も子どもも、それほど圧迫感を感じずに進めることができますね。勿論振り返りが必要な時もありますが、授業時間を延ばすことには注意をして下さい、と伝えています。

学力の定着から学力アップへ

今の学習指導要領になる前の時代には、国語・算数の反復学習・反復練習の時間が減らされたのでは、という指摘がありますが、貴校ではいかがですか?

小田校長

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ひとりひとりにアドバイスをする池田先生

 実際問題、教科書では減りましたね。学習内容の減少により教科書が薄くなり、問題数も減りました。今、子どもたちの学力はなかなか向上しません。現代の子は、幼児期から親や周りのおとなにやってもらい、お膳立てされて育ちます。子どもは親や大人にわが身を委ね、レールの上にのっていけばひと通りはできます。できた気になるんですね。でも「自分で考えてやってごらん」というとどうやったらいいのかわからない。自分のことを自力で出来ない子どもがどんどん入学してくる。これが「小1プログレムと」いう現象です。「なんで先生がやってくれないの?」「言ってくれないとできないよ!」言います。そういう子どもに対して、「それを考えるのが小学生なんだよ」と先生が言います。そこでギャップが生じます。今の小学校は、子どもの習得する力の育成から行っていかなくてはいけません。そのような状況なので、ひとつの事に時間がかかります。国語・算数の中でも、特に算数は積み重ねの教科ですから、本当に時間を使います。教科書は検定がありますので、ある程度は全国均一のレベルで作られています。算数では、もう少しやらせてあげたいと感じる子にはアイテムはいいですね。また習得が少し遅れている子どもに対しても、多少の負荷感をもたせることは必要です。できる子にとっては「教科書にはないぞ」という抵抗感を敢えて与えることで、それが意欲につながるんですね。そういう点では使いやすいですが、池田先生のような(子どもに寄り添った)取り組み方をしないと厳しいですね。一斉に全部を取り組む進め方では、置いていかれる子どもがでてしまいます。子どもには、出来ないという抵抗感が学習意欲の減退につながりますから…。教科書には、現場の先生の意見も反映されています。教科書を十分使いこなしてからのプリントや教材であると思います。本校の先生方の取り組みは、きちんと教科書を使用した上で、子どもの意欲向上のためにプリントやドリルを使うなど、それぞれ学力アップの対策をしています。それを無理に統一するのではなく、効果を共有していけば、おのずと収束するものは決まってくるんじゃないかと思っています。

現在、アイテムについて保護者からで何か意見が出てはいないですか?

小田校長

 教材購入への抵抗感はないと思います。中学生になれば教材費の負担はもっとありますので。理科でも資料集と学習ワークを持っています。力をつけるためには教科書で全てをというのは難しいですね。教科書は全ての子に平均的に進められるように作られていますからね。よりできる子やその反対の子どもにも対応するためには、教材や手当てはやはり必要ですね。中学は3年間で成果をださなければなりませんが、小学校は6年間時間があるので猶予があり少しのんびりしているようにも思えます。本校は各学年の先生方が、現状の子どもたちに対して問題意識・課題意識を持って取り組んでいますから、保護者からも異論はないですね。

先生方のチャレンジ精神を伸ばす

「アイテム」算数に取り組まれたのはいつからですか?

小田校長

 学年で導入したのは今の4年生が3年の時からです。ただ池田先生が以前から自分のクラスでは使っていました。今年は若い先生が多く入ってきたので、若い先生とも相談して使っています。実は池田先生は今年が最後になりますので、若い先生方に自分の持っている経験則を伝えています。今、若い先生方も(アイテムの導入もあって)筑波大附属小学校の学習会・研究会へ休日を使って参加するようになっています。本校の若い先生は謙虚ですから、勉強する場を先輩の先生から紹介されて横浜や東京まで行っていますよ。本校では、算数については、今子どもたちに力をつけないと大変なことになるだろうという危機意識を持って取り組んでいますね。

4年生全体で使おうということになったのは池田先生の発案ですか?

小田校長

 はい。年度当初、池田先生から「アイテム」を使った取り組みをしてもいいですか?という相談がありました。私はそういうことはどんどんやってもらいたいと伝えました。

校長が革新的な方だからスムーズに進んでいるんですね。

小田校長

 この学校に着任した春に、あることで先生方が不安になり迷ったことがありました。その時先生方に投げかけました。「先生方は、今まで自分たちがやってきたことに自信を持っていますか?自信を持ってやっていたのなら、なにも恐れることはありません。自信を持って進めてください。それで批判された時は、私が保護者に対し説明し、必要であれば謝罪します。それでも駄目なら私が責任をとります」と。それ以後は、先生方が自信を持ち始めてくれましたね。加えて本校の教頭先生は、スーパー教頭先生です。附属小学校にも在籍していた社会科と生活科のプロですよ。そういう先生が近くにいてくれるので、指導法については、私がいなくても教えてもらえるという安心感を持って、若い先生は仕事に取り組めるのだと思います。

 学習状況調査の数値だけで判断されると、本校にはまだまだ改善すべきところはあります。先生方には、考え方を身につけさせていく中で、すぐに数字の上で結果が見えなくても、必ず実を結ぶから心配することないよと伝えています。本校の自慢になりますが、学力調査での無答率が限りなく0(ゼロ)なんです。答えない、答えを書かなという子が非常に少ない。記述式でも必ず何かしら解答を書くんです。これは素晴らしいことですよ。答えは間違えでも、その子なりに考え方や答えを導き出せている、というところは本校の特色であり成果だと捉えています。

現代の子どもは「教えたことはできるが自ら立ち向かう力が弱くなっている」と言われますが、貴校においてはいかがですか?

小田校長

 問題解決の能力ですね。自分のもっている価値観を素朴概念と私は呼んでいるんですが、今までの経験値、学習してきた事、身についてきた物で、目の前の事物・現象、問題・課題にどう対応したらいいのか、その捉え方、考え方ができるようになる。そのためには、1年生から、小さな成功体験を積み重ねてあげて行くことです。最初は躓いて乗り越えられなかった壁が乗り越えられるようになると、すごく自分の成長になって、その先が楽しくなるんだよ、ということを経験させることですね。成功体験があれば「じゃあやってみよう」という意欲につながっていきます。その意味では、本校の取り組みは成果を上げていると思います。

 10月に運動会がありましたが、保護者から「今までで一番よかった」と言ってもらいました。何がよかったのかを聞いたところ「子どもたちが最後まで諦めなかった。全力でやり、負けたら悔しがっていた。」というんです。負けて悔しい!と思うことが成長なんです。保護者の方もいいところに気がつかれたと思いました。「負けて残念だったね」のひと言で終わらせるのではなく、「悔しいと思えるいい経験をしたな、成長したな」とご家庭でも言ってあげてください、と学校便りに書きました。保護者の方々も学校のやり方、取り組みを理解してくれています。800名以上いると1クラスに1~2人くらいはじっとしていられない子どももいます。ちょっとしたことで不安定になって、多動になってしまう子もいます。でもそれも周りなんですよ。周りがそれを受け入れるという姿勢を見せてあげると、そういう状況になっても自分でクールダウンするんですね。「隣の空き教室行っていいですか?」と自分で切り出します。そうすると先生も 「そうか、じゃぁ行っておいで」というと自分でその教室に行って椅子に座って気持ちを落ち着かせて、また戻ってくるんです。高学年になるとそういうことができるのは、周りがそういう子を阻害しないという安心感が、教室に自分の居場所があるからです。勉強が不得意な子もそうですね。一所懸命やっても成果があがらなくても居場所があるんです。そういう居場所作りを先生方が作ってくれています。

校内研修のあり方 ~先生同士で学び合い~

貴校では、池田先生のようなベテランの先生と若い先生との学び合いや研修のようなものはあるんですか?

小田校長

去年の5月に、ある若い教員が校長室に入ってきて、真剣な顔でこういうんです。「相談があります。勤務時間外で構わないので、校内で勉強会を開いていいですか?」と聞いてきました。例えば跳び箱の飛べない子どもに、どうやって指導すればいいのか。自分で調べるのも校外の研究会にいって勉強するのも時間的なロスが大きい。今までの経験で知っている先生が校内にいたら、是非教えてほしい。そういう研修会を自分たちで自主的にやりたい、ということだったんです。「それはすごくいいことだよ。子どもたちに影響のない時間なら、勤務時間の内でいいのでやりなさい」と言いました。この取り組みは去年から継続しています。今日も朝から勉強会の打合せをしていましたね。若い先生自身が、自らチューターとなって研修をするようになっています。今は市内どの学校も、学年が上がる時はクラス替えをします。同時に学校によっては先生もシャッフルします。でも私は、高学年の2年間を一つのチームでやる事にしています。担任は2年間グループで、この学年をやるという意識を持つようにと言っています。またそのグループには必ず一人ベテランを配置しています。例えば今の4年生は、池田先生と1年目の先生・2年目の先生・7年目の先生がという構成です。必ず核になる経験豊富な先生を一人配置しています。こういうグループでやっていますので、何かトラブルがあっても、まず学年の核になる先生に相談し、そこで解決できなければ教頭校長に相談するようになっています。まだ若い先生が多いので、授業が終わった後には必ず、「もっとこうだったね」という話はしていますね。
 学校は昔からナベブタと言われて、校長先生以外はみんな一緒で、全員が一国一城の主であった時代があります。先生は、誰もみんな同一の土俵という考え方でしたから、若い先生が育ちにくかったのです。今はそのようなことがなくなりつつありますね。

横須賀もそうですが東京でも若い先生方が、今そのような取り組みに一生懸命ですね。

小田校長

そうですね。OJT(校内研修)など民間企業でも研修は多いですが、学校でも今はそのような取り組みが行われてきていますね。いい傾向だな、と思いますね。

School Data

学校
神奈川県横須賀市久里浜6丁目7−1
学校長:小田部 忠仁